「絵羽浴衣ってありますよね。絵羽浴衣100枚、すぐにそろえられます?」
かなり切羽詰まった感じの電話でした。
絵羽浴衣とは、主に踊りに使う浴衣で袖から身ごろから裾まで続いているデザインの浴衣です。
本来絵羽浴衣とは、白地の浴衣に直接絵を描いた物です。
定番の絵羽浴衣は、袖は袖、身ごろは身ごろ、奥身は奥身とそれぞれ別々に型を起こし、別々に染めた物を手作業で縫い合わせて仕立てます。そのため大量生産がなかなかできず、定番商品の浴衣でさえ、あまり在庫は作り置き出来ません。
100枚そろう物・・・では、逆に柄はこちらから提案させていただきます。
でもなぜ100枚そろう物ですか?納期はどうなんです?
「いやすみません。実は1ヶ月後のイベントに使いたいんです。」
と言うわけで、定番の絵羽浴衣を取り扱っている問屋さん、工場などに在庫の確認。
その中でようやく在庫を見つけました。
すぐにカタログをスキャンして丸を付け、メールに添付してお送りいたします。
何しろ時間があまりありませんので、大急ぎです。
「ありがとうございます、左上の柄に決めたいと思います。」
良かったぁ。これなら充分間に合いますね。
「で、相談なのですが、会社のイベントで使うのですが会社のロゴと名前って柄の一部に入れることできますか?」
!!!!うーん、となるとシルクスクリーンプリントで入れるのが早くてきれいです。
ちょっと待ってください。至急プリント工場の様子を聞きます!
業務用のシルクスクリーンプリントは、専門の工場が浜松市内にありそこに、型の制作込みでお願いしています。
急いでプリント工場に確認すると、「うーん、何とかなるかなぁ。」
ただ難しいのは、仕立上がった浴衣にプリントをする場合、縫い目を避けてプリントしないときれいにできません。そのためプリントできる場所が限られてきます。
取り急ぎお客様にはロゴのデータを送っていただきました。
そしてまず浴衣を1枚手配し、それを基にロゴの大きさと位置をプリント工場にて打ち合わせ。
結果、胸のところに入れるのが名前も目立ちプリントもきれいに入れやすいという事がわかりました。
まずプリントを紙に打ち出し、それを実際の浴衣に張り付けて写真を撮り、お客様に確認していただきます。
こちらの位置にこの大きさでプリントしたいのですがどうでしょうか?
「うん、これでいいですよ。このまま進めてください。」
お客様にOKをいただきましたが、この時点であと3週間しか日にちは残っていません。
プリント用の型の作成を手配すると同時に、浴衣の入荷を待ちます。
プリント屋さんと打ち合わせ中。
「プリントの場所を表に出してもらえると早いんだけど・・・」
了解です。それは会社でたたみ直しいたします。
3日の後、浴衣が入荷してきました。
1枚ずつビニール袋に入っている浴衣を、袋を外しいったん広げてたたみ直します。
100枚全てたたみ直しした後、プリント工場に運びます。
あとは型が出来上がってきたらプリントを施すばかり。
この時点で、あと10日を残すだけです。
この後はタイミングが重要。
プリント屋さんにお願いして、他の仕事の都合を付けてもらい、型が出来上がってきたら即プリントにかかってもらいます。
プリントの型は予定通り。
そしてプリントも即施してもらい、なんとか納期5日前に上がってきました。
でもちょっと待った。
プリントするため広げた浴衣です。
納品するには元の通りたたみ直さないといけません。
結局、100枚の浴衣を2日かけてたたみ直しました。
その後、無事に浴衣を発送。
お客様も希望した浴衣がイベントに間に合って大喜び♪
時間的にドキドキした案件でしたが、無事に出来上がり本当に良かったです。
※上記のベースとなった絵羽浴衣は、最低でも本体1万円以上致します。それに加えてプリント代、型代が別途にかかっております。
数千円で完成するものではないことをご了承ください。