旅館やホテルで出される寝巻仕立ての浴衣と、花火大会や夏祭りの時などに着られる一般用の浴衣とは、生地も仕立ても異なります。
でもホテルの特別室用にちょっと豪華な浴衣を使いたい。
できれば地元浜松市の物を使いたい。
と言う事で白羽の矢が立ったのが注染の浴衣生地です。
これで寝巻仕立ての浴衣を作って欲しいと、生地持ち込みで依頼が来ました、
先にも言いましたが、旅館浴衣と一般浴衣とでは生地が違います。
旅館浴衣は、洗って洗って洗いまくって使われます。
業務用の洗濯機で洗われた後、高熱のローラーアイロンで仕上げられます。
一般浴衣用の注染生地が、こんなに過酷な状況に耐えられるとは思いません。
と言う話をしたら、じゃあとりあえず1枚作ってみようか。
それで様子を見ようか、と言う話になりました。
1枚だけ作るのなら、縫製屋さんにはお願いできません。
自分で裁断をします。
写真の奥に見えるのは、通常浴衣の裁断に使う”裁断機”。
でも今回は、1枚だけなのでハサミで裁断します。
図面を見ながら線を引き、引き終わったらハサミで切って行きます。
ハサミを入れる瞬間は、いつもすごい緊張!!
間違えたらやり直しがききません。
なので納得いくまで、何度も何度も確認してからハサミを入れます。
まだ寒い時期でしたが、緊張のあまり汗びっしょりで裁断を完了いたしました。
裁断が済むと今度は縫製です。
縫製は、プロに任せます。
「おばちゃん、1枚試作品なんだけど、今縫っている浴衣の間に挟んでもらえる?」
浴衣の縫製のプロとは、長年内職で浴衣を縫っているおばあちゃん。
普段から中の良いおばあちゃんにお願いして縫ってもらいます。
裁断済みの浴衣を持って行ったその日の夕方、
「おーい、できたよ。いつ取りにきてもいいからね。」
さすがです。
こんなに早くできるとは思っていませんでした。
さすが一般用浴衣の生地です。
とてもおしゃれな旅館浴衣に仕上がりました。
こうゆう一般用の浴衣柄も、旅館浴衣にどんどん取り入れていくべきなんでしょう。
実際は旅館やホテル側の意向もあって、なかなか難しい部分もあるのですが、やはり作る側からの提案も大事だと思います。
と、こちらの浴衣。
無事に納めさせていただきました。
しかも予定よりもかなり早く。
やっぱり普段から縫製屋さん、内職さんなど職人さんの信用をいただくのが大切だと痛感いたしました。