今でこそ「イベント用におそろいの浴衣を作りたい」というお話が多くなっていますが、伝統的には地域のお祭のときのユニフォームとしてそろいの浴衣を作りたい、という話が一般的でした。
今回、お話をいただいたのは、名古屋市緑区の城之下町内会に所属している大学生。
今秋の祭りに着る浴衣を新調したい、とのお話をいただきました。
「何か写真を送れば、それからデザインを起こしてもらえるんですか?」
そうですね、まず写真を見せてください。それからお話を進めましょう。
早速送ってくださった写真は、ちょっとピンぼけで小さくて・・・・
「この段幕の鳳凰と麒麟を入れて、あと家紋も入れて欲しいんですが。」
すみません、正面から撮ったもっと大きな段幕の写真は無いのですか?
「もう祭用の倉庫に仕舞ってしまったので写真は無いんです。でも資料となりそうな写真が有りましたので、それを送りますね。」
「鳳凰と麒麟と獅子と家紋を入れるた浴衣のデザイン」となりましたが、この画像からデザインを起こすのは大変です。というよりプロのデザイナーに頼むしかありません。
ですが最初からプロに任せると、デザイン料が高額になってしまいます。
お客様、提案なのですが、清書はプロに任せるとして、その前のデザインは弊社内で起こしましょうか。パーツの配置、大きさなどを弊社内のデザインで見てもらい、最後にプロに作ってもらうのはどうでしょう?
「そうしてくださると助かります。デザインができましたら連絡ください。」
というわけで、まず鳳凰と麒麟と獅子はフリー素材から引っ張ってきます。
家紋は写真からパス化して抜き出します。
今回、祭用であること、枚数が少ないこと、これらの条件で「注染」で染めて本仕立てで作ります。
まず「注染」用のデザインを起こしていきます。
これを叩き台として、デザインを変更していきます。
「家紋ではなく、文字にしたいのですが。」
「楽 の文字を入れたいのですが。」
「2色(紺とエンジ)にしたいのですが。」
お客様との打ち合わせで、デザインを少しずつ変更していきます。
やはり言葉だけではわからないことが多いですから、一つ一つ絵にして確認していきます。
「城之下の文字が一つ逆になっているのはどうしてですか?」
注染は生地を蛇腹状に折りたたんで一気に染めますので、折り目ごとにデザインが鏡に写したように逆になってしまいます。そこであらかじめ逆になっても良いように逆のデザインを入れておきます。
型のデザインの横に、生地を伸ばしたときの図を付けておきましたので確認ください。
デザインを繰り返すことでだんだんとイメージが固まってきます。
何枚目かのデザインで、ようやく納得する物が出来上がってきました。
ここまで決まれば後は簡単です。
このデザインを基に、プロのデザイナーにパーツを清書していただき、本番用のデザインを上げてもらいました。
お客様にも確認していただき、半金のお支払→本制作に入ります。
まず染用の型を作ります。
染め型は、伊勢型紙です。伊勢に発注をして作ってもらいます。
型ができたら、注染にて染めを行い、生地が仕上がったら縫製に入ります。
事前に着られる方の身長を聞いており、定番サイズで着られる方と別注サイズの方を聞き、それぞれ作り分けをいたします。
定番サイズは、浴衣カタログに記載された身丈を基準に考えて提案させていただきました。
お話をいただいてから、完成まで約半年かけた浴衣です。
でも時間が合った分、色々とお話しながら、一番良い形で作ることができました。
町内会の中でも一番の若手の大学生さんが代表して話をしてくださいましたのは、今後町内会を支えていくわけですので、こちらの町内会も末永く安泰かと思われます。
後ほど、実際のお祭りのときの写真を送ってくださいました。
この様に皆さんが喜んでくださり、本当にありがたく感じております。