· 

晒し工場の見学

晒し工場が9月いっぱいで閉鎖すると聞き、それなら閉鎖の前に一度工場を見学したいとお願いしたところ、「いいよ~、いらっしゃい。」と快く返事をしてくれました。

 

晒し工場があるのは、隣の県。

ちょっとした出張旅行です。

 

 

晒し(さらし)工場とは、晒しをする工場です。

じゃあ、晒しって何?となりますが、生成り(きなり)の生地を白くする工程のことです。

 

 

つまり、

 

きなり生地

 上のような生成り(きなり)の生地を、下のような白い生地にします。

 

 

 

白い生地って、実はすべて白い糸で織られていて白い生地として出来上がっているわけではありません。特に浴衣などに使われる生地はそう。綿からそのまま糸にした生成りの糸を使って織りあげられて、後で白くします。

 

簡単に言うと、漂白剤をつかって白くするのが「晒し(さらし)」と呼ばれる工程です。

その漂白の専門工場が晒し工場となります。

 

 

ちょっと専門的な業界の話になるのですが、生地問屋さんが糸を手配し織り工場へ生地を織らせて、それを晒し工場、整理工場にいれて生地を仕上げるのではなく、晒し工場さんが糸を手配し、それを織らせて、できた生地を晒して、その生地を在庫して、生地問屋さんから注文があったらそれを出荷している場合が多いそうです。

なので「織り工場の元締め」的なのが、晒し工場らしいのです。

 

 

晒し工場

工場に到着後、さっそく晒しの工程を見せていただきました。

 

写真に写っているのが、晒しをする釜です。

この中に生地を入れて煮沸し、数種類の漂白剤や化学薬品を入れて、漂白します。

その際、その生地が注染に使われる生地なのか、捺染で使われる生地なのか、旅館浴衣用の生地なのか、使い道によって晒しの工程が変わります。

 

つまり染めやプリントの良しあしが、この工程で変わってくるのです。

 

 

晒し工場

ちょうど釜が一つ稼働していました。

せっかく来たのだから、と中を開けて見せてくださいました。

 

浴衣などに使われる小巾の生地がみっちり入っています。

小巾の生地は、浴衣によく使われる生地です。

 

昔はひっきりなしに晒しをしていたのですが、やはり需要が少なくなり今稼働しているくらいの釜で充分間に合ってしまうようです。

こちらの晒し工場は、浜松市の問屋、工場へたくさんの生地を卸していましたし、今でも卸しています。

またこれで浜松の繊維産業が一歩衰退します。

 

 

「もうずいぶん前から浜松は産地ではなくなったから、今さら衰退を悲しんでもしょうがないよ。」

と晒し工場の社長から言われてしまいました・・・・