繊維業界で言うところの「産地」とは、製品ができるまでの全ての工程がそろっている地域の事です。
最近、「産地」という言葉をよく耳にします。
産地の学校?浜松は浴衣の産地?
なぜ「産地」という言葉を使うのか。イベントに箔を付けるため、はたまたブランドをイメージして?
じゃあ、浴衣の産地と呼ばれている静岡県浜松市は産地かというと、産地ではありません。
ええ、まったく「産地」なんかでは無いのです。
だって他の地域の協力がなければ、浴衣は出来上がらないのですから。
「産地」であるための条件をもっと噛み砕いて言うと、
糸を作る、糸を染める、糸にノリを付ける、織機に糸を通す、布を織る、晒しをする、染める、整理する、裁断する、縫製すると言った(本来はもっと細かいのですが)様々な工程が一つの地域の中でこなせることです。
(糸の原料の綿花は、戦後輸入が一般化しているので工程には入りません)
一つの地域の中でできる利点は、運送コストが少なくて済む、早くできること。
糸ができたらトラックに積んで染工場、糊付け工場に運ぶ。染めが終わったらトラックで整理工場に入れる。自分の会社のトラックで運べば、運送ちんが安く済みますし、すぐに他の工場に入れて次の工程に進むことができます。
じゃあ浜松市はどうかというと、浴衣製造に関しては、生地を織っていない、晒しができない、今後整理ができなくなる。
その工程の都度、関西方面や関東方面にお願いしてもらうしかありません。
「最終的に浜松市から出荷するから、浜松市は浴衣の産地である」という理屈は通用しません。
「産地」というのは、とても稀有な地域の称号でもあります。
最終的に浜松市から出荷、が良いのなら、外国で作って浜松市でタグを付ければそれでよし、という事になります。
中国で作らなくても、群馬や和歌山で作って浜松に持ってくればよいという事になります。
まるで「浜名湖産のウナギ」や「下関のフグ」みたいな話です。
「産地」とは、すべての工程が一つの地域でできるという、本当に産業に恵まれた地域を称えるような名称です。
本当は産地ではないにも関わらず産地という言葉を使うのは、偽物ブランドです。
残念ながら浜松市の浴衣の現状をみると、「産地」ではないのに「産地」という言葉を使っています。
えっと、きちんというと実際に手を動かして物を作っている人はそんなことは言いません。
どうやって自社製品を売ろうか、なんて考えている問屋、商社が使っています。
なので職人さんたちは、苦々しい思いをしています。
なんかなぁ、浜松って繊維に限らずそうゆうところがあるんだよなぁ。
なんでだろうなぁ。
弊社はたくさんの職人さんたちに支えられながら仕事をしています。
なので職人さんたちの思いは大切にしているし、同じ感覚で仕事をすることを大切にしています。
「産地」の名称の使い方に関しては、弊社も苦々しく思います。