地紋とは、着物の「小紋」のような細かな文様を一面に入れること。
旅館浴衣は、毎日洗濯をして使う浴衣です。
洗濯は、業務用の専用の洗濯機。大きなドラム式の洗濯機で、予洗、本洗、すすぎと何度も何度も洗われます。しかも清潔を保つために、専用の洗剤を使います。場合によっては漂白剤を使ったり、お湯を使ったりもします。
そんな衣類にとってはとても過酷な洗濯を使用後は毎回行われるわけで、当然それに対して耐えられるだけの高い耐久性の浴衣が必要となってきます。
昔は耐久性の高い、ナフトール染料で染められていました
ですが、ナフトール染料は化学反応で色を出すため色の作り方が難しく、安定して出せるのは”紺”や”エンジ”といった限られた色でした。昔の旅館浴衣が白地に紺色ばかりだった理由の一つです。
またナフトール染料は、その製造時に公害が出る可能性が高いとの理由で、製造が中止されてしまいました。
今、旅館浴衣は顔料プリントが主流です。
顔料プリントのは、漂白剤、殺菌剤などの化学薬品に強く、また様々な色が簡単に使える利点があります。
ですが、ナフトール染料と比べて耐久性が劣ります。いくら専用の「ディクセル方式顔料プリント」を使っても、色落ちは避けられません。特に濃い色が目立ちます。例えば、黒い色のべた染めですと、途端に色落ちが目立つようになります。
上記のデザインは、一般販売用の浴衣のデザインです。
一般家庭で使うには特に問題はありません(まったく色が落ちない、というわけではありません。それでも若干色は落ちます)
だけど、上記のような業務用の洗濯が対象の場合、すぐに色が落ち、毛羽立ちが目立ってきます。
じゃあどうすればよいのか。
一つの方法として、濃い部分に地紋を入れて色を薄めれば、色落ちが目立たなくなります。
地紋の役割として、もう一つ。
旅館浴衣は業務用として大量に作られますので、少しでも1枚単価を下げたいものです。
ですが、旅館浴衣は使う色が増えれば単価も高くなります。
上記のデザインですが、ぱっと見て、”黒””濃いグレー””薄いグレー””白”の4色に見えます。白は生地の色なので勘定に入れないとしても、3色に見えると思います。
ですが、実際は2色しか使っています。
濃いグレー部分は、黒に地紋を入れていることで違う色に見えるようになっています。
アップにしてみると色数はよくわかりますが、実際に浴衣を着るとなかなかわかりません。
下のデザインもそう。
こちらは1色しか使っていません。
アップにしてみると、1色であることがよくわかります。
濃く色をのせたい場合、このような方法で色落ちを分からなくさせるやり方があります。
これも業務用の旅館ならではのデザインです。
なので新しく旅館浴衣を作る場合、デザインの段階でこのような方法を是非取り入れて欲しいと、そして長く使える浴衣を是非作ってほしいと思います。
ご不明な点がありましたら、弊社までご一報下さい。