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染めとプリント

基本的に浴衣で使われる生地は白い無地です。

そこに柄を付けていくのですが、柄を付ける方法として「染め」と「プリント」があります。

 

プリントというとちょっと軽い感じがするのですが、別の言葉で言いなおすと「捺染(なせん)」となります。

捺染というとけっこう伝統的な雰囲気が漂いますが、実は同じこと。

「手捺染」と言えば、シルクスクリーンプリントのようなものだし、「機械捺染」といえばプリント工場の製品だったりと。

 

 

まぁ技術にも色々な言い方があるのは、他の産業でも同じこと。

 

 

で、「染め」と「プリント」ですが、基本的に「染め」は染料を使います。「プリント」は顔料です。

それぞれその特徴に一長一短があり、どちらが良いのかなんてことはありません。

 

染料とは・・・、顔料とは・・・・という説明は省きます。

その代わり染料で染められた生地、顔料でプリントされた生地の違いを記します。

(ついでに、業務用のディクセル方式顔料プリントについても記載します)

 

 

染料と顔料

染料は、上記に書いてある通り化学反応で発色・定着しています。

その強さは色によっても違います。

 

ご家庭で使用する衣類でしたら顕著に違いは出ませんが、旅館やホテルなどで使われる業務用の製品ですとその違いははっきりと出ます。(洗濯頻度、強さが段違いですので)

 

業務用として昔使われてきた”金茶色”のタオル(業界の人ならゴールドのタオルといった方が通じます)がありますが、最強と呼ばれるスレン染めが出てくる前の反応染めの時代、反応染めの色の中で金茶色が強い色だったからです。

 

 

浴衣に関して言えば、ディクセル方式顔料プリントが出てくるまではナフトール染料を使ったプリントが一般的でした。

染料を使ったプリントになるのですが、発色・定着をさせるためプリント後に酢酸を吹きかけていました。(酸化させるため)

工場に入った時、独特の酸っぱいにおいがとても懐かしく思い出されます。

 

染料は先にも書いた通り、化学反応で発色・定着させるため、生地につける際は全く違う色になっています。

化学反応(酢酸を吹き付ける)までは、きちんと色が出ているのかどうかわかりません。そういう事もあり、色がきちんと出しやすい”紺”や”エンジ”などの定番色が使われてきました。それでも、その時々の気温や湿度で出てくる色は微妙に異なってしまいます。

 

なかなかお使いの難しい染料ですが、安価であり、湿摩擦耐久性がとても高いため、長く使われてきましたが、現在では染料の製造工程で公害が出るとのことで少し前から生産が中止となっています。

 

 

 

専門的な話が続きましたが、実際に着る人にとっては見た目が大事。

染料と顔料の違いです。

 

 

染料と顔料

同じ紺でも、染料と顔料は色の深みが違います。

写真ではわかりにくいかもしれませんが、太陽の下でみるとはっきりとわかります。

 

染料の方が深みがあり、顔料プリントは白っぽく見えます。

染料の浴衣を見慣れた人は、顔料は安っぽく見えるかもしれませんが、顔料には顔料の良さがあって、染料の大敵の化学薬品(漂白剤や殺菌剤)に対して強い事があります。

なので、旅館やホテルで使われている旅館浴衣は、顔料プリントが一般的です。(他人が着たものを洗濯するので、当然漂白剤や殺菌剤をいれます)

 

ただ顔料プリントでは、摩擦に弱い特徴があります。そこでできるだけ耐久性を上げるため「ディクセル方式顔料プリント」が開発されました。

「ディクセル方式顔料プリント」は専用の前処理、後処理、専用顔料が必要なため、認定工場でしかできません。

認定工場は、浜松市にある三軒の工場だけです(他にもあると聞いて調べたのですが、未だ見つかっていません)

 

 

 

ディクセルプリントと顔料プリントの違い

中国製の浴衣は、もれなく一般的な顔料プリントです。

一見ディクセル方式顔料プリントよりも艶があり良いように見えるのですが、耐久性は半分以下。

 

 

業務用として使われる旅館浴衣はコストも大切な要因です。

なので耐久性が半分なら、価格は半分以下なら中国製を使う意味があります。

半分で日本製と同じ。それより高いのなら、結局のところ日本製を使った方がお得という事になると思います。

で、今の中国製の浴衣のお値段は?

 

 

 

むかーし、昔の話。

 

僕がまだ駆け出しのころです。

あるリネンサプライ(浴衣のレンタルをしている会社)から、とにかく安い中国製の浴衣を作れと依頼がありました。

で、指定通りに中国でオリジナルデザインの浴衣を安く作り納品しました。

ところがそれを使った旅館様から休憩室の椅子に浴衣の顔料が付いているから何とかしろとのクレームが入りました。

 

リネンサプライの社長

「安い浴衣を作れとは言ったが、色が落ちる浴衣を作れとは言っていない。お前が何とかしろ。」

 

一人旅館に出向き、宿泊客が寝静まった深夜に椅子の清掃をしてきました。

で、リネンサプライへは大幅な値引きを。

 

 

この一件があってから、リネンサプライ様や旅館・ホテル様へは日本製の安心できる浴衣を勧めています。

 

 

 

とはいっても、使う場面、使い方によってディクセルプリントが適当なのか、一般的な顔料プリントでも良いのか、それとも染料が適切なのか、が分かれます。

弊社では、その都度、何が適切なのかお客様へご提案させていただいております。