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旅館用の羽織生地

旅館やホテルに泊まった時、浴衣と一緒に提供される羽織についての話です。

 

ちなみに、腰までの丈で袖がない物を「陣羽織」「袖なし半天」などと呼びます。

一番よく提供される、腰までの丈で袖があるものを「茶羽織」「半天」等など。

膝くらいまで丈の長い物を「丹前」と呼びます。

 

 

が、弊社へいただくお問い合わせの中には、この区別がごちゃごちゃになっている方も多くて、一つ一つ確認する事が大切となります。

(この間も「丹前の生地だけど・・・」と言われて、丹前について話していたんですが、実際は茶羽織だった事があります)

 

 

 

この羽織ですが、やはり業務用用として使われるものですので、耐久性が大事。

さらに、防寒着としてもきちんと役に立たないといけません。

 

最近では色々な素材があるように聞こえますが、基本的には「ウール」「ポリエステル」「アクリル」の三種類で、それぞれ100%の物だったり、混紡されていたり、混紡もその割合が色々だったりします。

 

他にも種類を分けるものは、織り方です。

一般的な「平織り」。表面に特徴のある「梨地織り」。厚みがある「アムンゼン織り」・・・・織り方はまだまだたくさんあります。

が、残念なことに、技術的に引き継がれなくなり、今では幻となってしまった織り方もたくさんあります。

 

 

基本的に羽織の柄は、あまり目立たない抑えた柄が多いようです。

これは、浴衣のデザインが様々ですので、羽織まで派手ですと、柄と柄が喧嘩しておかしく見えてしまうからです。

浴衣は派手、でも羽織は無地、の方がどんな人が着ても合わせやすいからです。

(帯が地味なものが多いのも同じ理由です)

 

 

今では殆どなくなりましたが、昔の景気が良かったころは旅館やホテルのオリジナルの柄の羽織を作ることがよくありました。

もちろん、浴衣と帯も合わせてトータルにコーディネートされていました。

その頃の羽織を見ると、ホントほれぼれします。

 

 

羽織の場合、柄を入れるのは”織り”で入れます。

 

 

昔は、ウールで羽織を作ることが普通でした。

 

ウールは丈夫で温かく、汚れも付きにくいことから、業務用の羽織に最適な生地として使われてきました。

今、一般的に使われているポリエステルの羽織よりも汚れが付きにくく、暖かくて耐久性があります。

 

※ちなみに、木綿を化繊で作れないかと考えて作られたのがポリエステル、ウールを化繊で作れないかと考えて作られたのがアクリル、だそうです(トヨタ産業記念館にて)

 

汚れが付きにくい=柄を付けるのにプリントができない、顔料や染料が浮いてしまう

 という事で、柄を表現するには”織り”で作られることとなりました。

 

 

今では簡単なポリエステルにプリントの羽織が出ていますが、プリントできるという事は汚れも付きやすいという事です。

しかも浴衣の上に羽織って使われるので、プリントが剥がれやすくて・・・・温泉地に行くとそうゆう羽織を見て思わず涙が・・・

 

 

 

羽織はウールが一番! という事は事実なのですが、ウールに限らず天然の繊維は価格が高く、というより安価に化学繊維ができるようになったため天然繊維の需要が少なくなり、それに伴い生産量も減少。生産量が減ったため価格が高くなり、高いから需要が減り、さらに生産量も減るという、まさしく負のスパイラル。

 

 

日本国内のウールの産地と言えば、愛知県の一宮市から岐阜県の岐阜羽島市にかけての一帯です。

繊維産地の復興をかけて色々な展示やイベントが行われていますが、それもアパレル製品の事ばかり。旅館やホテルなどの業務用の生地は、減少の一途をたどっています。

さらに昨今の暖冬も需要の減少に拍車をかけ、業務用のウールに携わる方々も次々に廃業してしました。

 

今、ウールの羽織が欲しい場合、少量でしたら依然作った在庫品を使うか、在庫されている生地を使うかになります。

大量に欲しい場合は、糸を手配して生地を織るしかありません。(それを納得していただけると、とても良い物ができたりします)

 

 

 

これは、業務用の繊維製品全般に言える事ですが、「そうは言ってもどこかにあるだろう」という事が無くなりました。

欲しい物があって、その物があったらすぐ手に入れる、でないと二度と手に入らなくなってきました。

 

あと、旅館・ホテル様でウールの羽織があるのなら、大切にお使いすることをお勧めします。

丹前から茶羽織への作り変えもできます。

ウール100%の羽織は、財産ですので、末永くお使いいただけることを望みます。