弊社は、昔からたくさんの旅館浴衣を作ってきました。
作るだけじゃなく、修理や問い合わせも含めると、多分リネンサプライ以上に旅館浴衣を触っていると思います。
その経験から気が付いたことです。
浴衣は、メーター以上の巾の生地で作った場合は歪んでことが多い、事が分かりました。
特に中国製はゆがんでいます。
と言っても、最初に言いますが歪んでいても着ることはできますし、ましてその日限りしか着ない旅館浴衣でしたら全く問題はありません。
基本的に旅館浴衣に限らず、浴衣は小巾と呼ばれる日本独自の幅の生地から作られます。
旅館浴衣で、36cm巾。本仕立て浴衣で38cmもしくは40cm巾。
その生地を使って浴衣用に裁断するとき、横に直線でカットしていきます。
旅館浴衣の場合、若干斜めカットはありますが、基本的には直線カットです。
背中は二枚合わせます。
要は、歪みようがないのです。
他にも使われる生地で小巾の倍の二巾生地(72cm巾)がありますが、これも直線でカットします。
小幅の倍の生地幅なので、背中は生地幅をそのまま使います。
なので歪みようはありません。
旅館浴衣は、一度にたくさん作ります。
最低でも100枚以上は作ります。
なので、生地の裁断はある程度重ねて、それをまとめてカットします。
もちろんとても気を付けて裁断するのですが、何十層も重なっている生地ですので上と下とでは若干のズレが出てきます。
それは仕方のない事なのですが、小巾、二巾の場合はカットが簡単ですので大きくズレることはありません。
問題は、一般アパレルに使われるようなメータ巾生地で浴衣を作った場合です。
広巾、メーター巾と言われる、生地幅が1mを超える生地の場合です。
見てわかる通り、小巾、二巾と違って、カットが複雑です。
横だけじゃなく、縦にも裁断しなくてはいけないところがたくさん出てきます。
もちろん気を付けて裁断していますが、何十層にも重ねられた生地を裁断してくのですから、、いくら最新式のレーザー裁断でも動かない保証はありません。
で、出来上がってきた浴衣がどうなるかというと・・・・
肩から裾までの丈と、襟の横から裾までの丈が違うパターンが一番多く見られます。
そして、きちんと伸ばすと裾が斜めになっています。
なので、オクミが斜め、もしくは皴が寄ります。
あと、袖丈が狭かったり、広かったりと様々です。
もう一度言いますが、だからと言って着れないという事はありません。
まして、その日限りの旅館浴衣なら、全く問題なく着ることができます。
とは言っても、作る方としては、適当でも良いのか、そういう問題じゃありません。
浴衣のクリーニングだって、リネンサプライだって、仕上がりがきれいで手間がかからない方が良いじゃないですか。
リネンサプライから入荷してきた浴衣を広げると、見えないところがクチャクチャになっているのは、やはり仕立ての問題だと思います。
歪みが出ないようにするには、歪みが出にくい小巾、二巾生地を使えば良いだけの話です。
じゃあ、何で広い巾の生地を使うのかと言えば、小巾、二巾は日本だけの幅の生地です。
中国とか海外で安く作るには、一番たくさん流通しているアパレル用のメーター巾の生地を使う必要があったのです。
で、広巾生地の浴衣を売り込む商社の営業マンのキャッチコピーは、
「広幅は小巾生地のように背中に縫い目がないから丈夫です。縫い目からホツけてくることはありません。」
えーーー、背中の縫い目がホツけてくるなんて、そんなことは無いのですが、見た目からそれを信じてしまう人が多く出てしまいました。うーん・・・、リネンサプライ業者だって背中からホツけてくるなんて事はないの知っているのに・・・・
(実際に数年リネンサプライで工場長やっていたことがありますが、一度もありません。ホツける場合は生地が破れます)
ちなみに旅館浴衣の縫製では、背中の部分は二重縫いです。
あれ、わかりにくいか。
拡大して、わかりやすいように撮りなおして・・・・
結局、中国製の浴衣を売りたいがために、「背縫いは弱い」説が広まってしまいました。
なんだかとても残念な話です。
と言っても、日本国内の問屋、業者でも「背縫いは弱い」と言っている人もいます。
本当に残念な話です。
日本国内で浴衣を作るとき、やはり生地単価もコストに大きく関わってきます。
一番安いのが、「小巾」
次が、「二巾」
最後に「広幅(三巾)」
小巾生地の生産量が減り、問屋や業者の中には小巾生地が手に入らなくなったため、他の生地に切り替えをはかり、その言い訳で「背縫いは弱い」と言っていた事もあります。
弊社では、昔も今もメインは小巾生地です。
使っても、二巾です。
もちろん三巾以上の生地も使いますが、基本は小巾です。
小巾の在庫はしっかりあります。
今後も、きちんとした浴衣を提供していきます。
それが弊社の役割です。