旅館やホテルなどで使われる浴衣は、基本的に毎日洗濯をして使われます。
不特定多数の人が袖を通すのですから、洗濯も一般家庭の洗濯よりも激しく、また漂白剤、殺菌剤などの化学薬品も使うため、浴衣にとってはとても厳しい環境です。
その厳しい環境でも負けない顔料プリントとして開発されたのが「ディクセル方式顔料プリント」です。
これはDICが認定した工場でしかできないプリント方法です。
日本で確実にできるのは、三工場のみ。
その三工場とも浜松市内です。
ディクセル方式顔料プリントは、専用の前工程、専用顔料、専用の後工程を通じて完成するプリントなのですが、このプリントができるのは「ロータリースクリーン型」か「金属ロール型」を用いたプリント方法のみになります。
「ロータリースクリーン」も「金属ロール」も、円筒形の型を回転させながら、生地に顔料をのせていきます。
なぜ二種類あるのかと言えば、これは自分の想像ですが、「金属ロール」の方が歴史が古く、「ロータリースクリーン」を導入するには新たな設備投資が必要だったのかな、と思います。
金属ロールは、文字通り金属でできた円筒形の型を使う物です。
プリントスピードが速く、その分工賃も安くなります。
ですが型の同期が難しく、2色使う場合の際は白い縁取りを付ける必要があります。
「ロータリースクリーン」は文字通り、シルクスクリーンを円筒形にしたもの。
新しい機械だけあって、色の同期が上手にでき、多色遣いの場合はロータリースクリーンの方がきれいに仕上がります。
どのくらい違うかというと、
上記のプリントは、「金属ローラーです」が、見てのとおり「コマ」や「縦線」の周囲に色抜きを作っています。
このように白抜きを作らないと、色がブレてのってしまいます。
ロータリースクリーンの場合は、上記の画像のように白い枠を取らなくてもきれいにプリントできます。
ただし小巾生地の場合、ロータリースクリーンは速度を上げてプリントできません。
プリント工程が長くなる=工賃が高くなります。
金属ローラーの場合、小巾生地でしたら速度を上げてプリントできるため、工賃が安く済みます。
ですが広幅生地の場合、色ムラが出やすいのべた塗部分が苦手となります。
また、ロータリースクリーンにせよ金属ローラーにせよ、型代が必要となります。
型代は、ロータリースクリーンの方が安く、金属ロールの方が高くなります。
(金属ローラー型の加工を安くやっていた工場が少し前に閉鎖したため、高く:適正価格? なりました)
型の納期は、ロータリースクリーンのが約2週間、金属ローラーが2~4週間かかります。
弊社では、どのようにお客様にお勧めしているのかというと、
- 小巾生地を使用
- 白地に1色
- 細かい連続柄
- 500枚以上の枚数がある
上記の条件の時には、金属ローラーを使った方が安くなります。
と言いますか、この条件ですと伝統的な旅館浴衣柄の浴衣が、ほぼ当てはまります。
また、旅館浴衣は消耗品です。
数年ごとに足りなくなった浴衣を補充しなくてはいけません。
先の条件は「新規で作る」場合です。
一旦型が出来てしまえば、追加分を作るのなら「金属ロール」の方が安くできます。
浴衣を作るには、お客様それぞれのケースがありますが、それに合わせてどちらの方式でのプリントが良いのかをご提案いたします。
お気軽にお問い合わせください。