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厚い生地

世間一般的な認識で、「薄い生地=品質が悪い」というものがあるようで、オリジナル浴衣を作るときやネットショップの問い合わせなどで「厚い生地が良い」とか「できるだけ厚い生地の浴衣がほしい」とか言われます。

 

が、はっきり言って、「薄い生地=品質が悪い」は間違いです。

実際は、目が荒い生地は薄く感じることから「薄い生地=品質が悪い」という認識になっているだけです。

「目が粗い」ということは、使っている糸の量が少なくて済むということです。原料である糸の量が少ないということは、コストをかけずに済むということです。なので安い生地は糸の量が少ない=スカスカで薄く感じる、ということになります。

 

 

 

 

 

本来、薄い生地というのは、細い糸を使って織られているわけで、細い糸を使って生地の形を成すには糸をたくさん使わないといけません。単純にそれだけでもコストが掛かっているということです。高価な生地というと”絹”が挙げられると思いますが、絹の生地は本当に薄い。厚手の絹生地とされる紬も、他の生地に比べると薄い生地になります。

 

さらに、細い糸を作るには質の良い材料を使わなくではいけません。

例えば、木綿の生地でいうと、細い糸を作るには繊維の長い上質の綿花でないといけません。品質の悪い綿花からでは、太い糸しかできません。

きちんとした薄手の木綿生地は、品質の良い高価な細い糸をたくさん使わないといけないため、出来上がった生地は高価になります。

 

 

浴衣用 特岡生地
浴衣用 特岡生地

「なるほど、薄い生地=悪い生地では無いことがわかりましたが、浴衣にするにはもっと厚い生地が良いです。だって下着が透けると困るし。」

 

弊社にお問い合わせいただいたお客様が良くおっしゃる内容です。

 

下着が透けるのは困る、これは皆さんが共通して思うところでしょう。

ですが浴衣は下着の上に直接着るものでは有りません。

 

浴衣を着たことのある方はわかると思いますが、男性だったらステテコを履きますし、女性はスリップをつけたりします。

本来浴衣は下着扱いでしたが、現代では違います。外で着る時は下着が透けないようにして着るようにするものです。

 

さらに言うと、浴衣は夏に着るもの。

蒸し暑い日本の夏に着るものです。

少しでも涼をとりたいのに、厚手の生地を使うのはどうでしょう。

 

 

実際の浴衣に使われている生地を見ても一見薄く見えないかもしれませんが、ちょっと透かすと向こうが見えるくらいの薄さです。

 

 

浴衣生地に使われる糸って、一番多いのが30番手の糸。その次に20番手。麻など素材が違えばまた糸の太さが異なりますが、一般的な注染浴衣の生地は30番手の糸をよく使います。

織り方は、経糸と緯糸が直角に交差する平織りです。

 

で、厚手の生地にするにはどうすればよいのか。

 

1、糸を太くする。

2、織り方を変える。

 

わかりやすく言えば、

 

1、糸を太くする:帆布

2、織り方を変える:デニム

 

 となります。

こうやって見ると、厚手の生地=品質が良い、とは必ずしも当てはまらないことがわかります。

 

 

 

カツラギ織
カツラギ織

一概に、「薄い=品質が悪い」「厚い=品質が良い」ということでは有りません。

生地は適所適材ですし、それに合わせて厚みを考えるのが当然です。

 

 

 

ただ、薄くて品質の悪い=目の粗いというのは間違った感覚では有りません。

例えば、木綿縞柄の生地でとても目の粗い物が出てきています。

こうゆうものに関わらないためにも、「厚い・薄い」ではなく、「粗い・詰まっている」といった感覚を持つことが必要かと思われます。

 

最近は販売する側も素人並みの知識しかないところが増えましたので、購入する側も自衛の為に知識をつける事が必要です。