新型コロナウィルスが猛威を奮い始めてすぐにマスクが品薄となりました。
真っ先に店頭から消えた「使い捨て紙マスク」に代わって注目を集めたのが「布マスク」。
製品として販売されていた「布マスク」もあっと言う間に無くなり、今注目されているのが「手作りの布マスク」。
と、この流れは誰もが知っている流れだと思います。
で、現在手作りでマスクを作ろうと、その材料となる「ガーゼ」が無くなり、その代わりにと「さらし生地」が無くなり、さらにゴム紐も無くなり、さらに糸まで無くなっている、という想定外の状況になっています。
弊社にも色々なトコロから「ガーゼ無い?」との問い合わせをいただいておりますが、当然全く有りません。
さて「ガーゼ、ガーゼ」と言っていますが、「ガーゼ」ってどんな生地でしょう。
「ガーゼ」は「ガーゼ」という織り方があるわけでは有りません。
甘撚りの糸を平織りでざっくりと織った生地が「ガーゼ」です。
元々一般的に販売している「ガーゼ」は、どちらかというといろいろな生地の中でも安くて悪い生地の位置づけでした。
「ガーゼみたいな生地」というと、良くないイメージで使われる言葉でした。
ですので、元々生産量は余り有りません。在庫がなくなったら織り始める、というくらいで、弊社でも定番のガーゼさらしは在庫がなくなったら2~3ヶ月待ってもらっていました。
今回の事でガーゼ需要が高まり、あっという間に無くなったことからも、あまりたくさん作られていなかった事がわかると思います。
「ガーゼ」ってどんな生地?ということに戻りますが、生地は実際に触って見て分かる部分が大きいものです。
ネット越しですと触るのは無理ですので、見てわかるよう一般的に「さらし反物」として販売されている生地と並べてみました。
実は糸の太さは、「ガーゼ」も「文さらし(さらし反物)」も同じです。
密度の違いがわかると思います。
さらに「ガーゼ」は甘撚の糸です。甘撚りとは、言葉通りに糸の撚りが少なくなっています。
糸の撚りが少ないと柔らかな風合いと吸水性が高くなります。その一方で耐久性は下がります。
なので「ガーゼ」は、そのまま着るものには余り使われませんでした。
ただ肌触りが良いため、二重、三重にして耐久性を上げて、寝間着やパジャマとして使われています。
「別岡さらし」は、旅館浴衣によく使われる生地です。
旅館浴衣用なので、一般的な浴衣生地よりも品質は劣ります。
でもこうやって比べてみると、「ガーゼ」がどのような品質の生地かよく分かると思います。
冒頭にも書いたように、今布マスクの製造需要がかなり高まっており、材料となる布が少なくなっています。
「ガーゼ」はもちろん、1反ずつの「さらし生地」も店頭から姿を消しています。
時々「ガーゼ生地」の販売を目にしますが、全て広巾生地です。
うーん、書いていいのか迷いますが、指摘されたら記事を消すということで。
本来、マスクや医療用として使われるガーゼは小巾生地です。
小巾生地とは、生地幅が34~38cmの着物や浴衣の反物と同じくらいの生地のことです。
広巾とは、小巾以上の広い巾の生地です。具体的には72cmとか108cmとか、まぁそれ以上の生地もあります。
小巾は医療用、広巾は衣料用。
何が違うのかというと「晒し方法」が違います。
「晒し」とは、織り上げた生地を漂白すること。
小巾生地は「和晒し」で晒します。
広巾生地は「洋晒し」で晒します。
加工時間とか使う薬品とか色々な違いがありますが、出来上がった製品で見てみると「和晒し」は生地の表面に化学薬品の残留がほぼゼロです。それに対して「洋晒し」は・・・、ということです。
「ガーゼ」や「さらし」を販売する時に、きちんと理解して言ってくれるところばかりでは有りません。
表面に残った化学薬品を落とすようにしっかりと洗濯して使えばよいのですが・・・・
新型コロナを防げても、化学薬品を体内に入れて他の病気になってはいけませんので、やっぱりきちんと説明するのは販売店の義務だと思うのですが。