御存知の通り「新型コロナウィルス感染防止」のため、様々な工場が休業しています。
当然繊維の業界もそうです。
工場は、仕事をしてもしなくても開けているだけで大きく経費がかかります。仕事が少ないのなら工場を閉めたほうが得策です。
ある工場では「一日あけているだけで最低限の経費が約40万円かかる。」と言っていました。
今回のコロナ禍で色々なイベントが無くなり、また人の動きも少なくなっていることから繊維業界は非常に厳しい状態になっています。
昨今の日本では、製造業に従事する人が非常に少ないため、「ものづくり」に対しての意識が低くなっています。
日本の「ものづくり」は、一つの工程ごとに分業されています。
例えば自動車を作るのだって、部品一つ一つをすべて同じ工場内で作っているわけでは有りません。色々な中小工場でネジやフレームや線材などを作り二次、三次下請け工場で組み立て、その組立てた部品を二次下請工場で作り、さらに一次下請けでもっと大きな部品にして、最終的にトヨタやスズキといった自動車メーカーの工場で一つに組み上げます。
繊維産業も同じ。紡績工場で糸を作り、染め工場、糊付け工場、整経工場などを経て織物工場に入り、その後も整理、プリントなど製品になるまで様々な工程ごとにある工場を経て製品となります。
最近、最終的な製品の販売価格が下がっています。
本来なら品質と価格がイコールでないといけないのに、品質以下の価格となっている場合が多いようです。
また一方で、品質以上の価格の場合も見られます。
「ものづくり」ができなくなった人は、品質がわからず価格もわかりません。
日本の「ものづくり」を支えているのは、高齢の製造業従事者です。
昔からやってきた仕事だから、と安い賃金で物を作ってくれています。
「年金があるから昔の工賃で良いよ」で作っているため、若い人が入ってこれません。
「新型コロナウィルス感染の拡大防止」のため工場が止まっているのは先に述べました。
先の見えないこの状態。もとに戻るまで2年くらいかかるとの話もあります。
2年は長くても、例えば半年とか仕事が無い場合、高齢の方がやっている工場が再開できるか、というより再開するのか、再開する気が残っているのか。これは非常に心配なところです。
繊維産業は斜陽業界です。
製品を作るまでに必要な一つ一つの工程に属する工場は、どんどん少なくなっています。
工程の中には、日本で一つしかない工場もあります。
しかもその工場が「年金があるから安くて良いよ」という工賃でやっていた場合(実際、こうゆうケースがほとんど)、その工場が再開しない場合どうなるのか。いちいち書かなくてもわかるかと思います。
当然、閉鎖した工場が受け持っていた工程は必要な工程となるので、他の工場が肩代わりすることになるのですが、そうなると「年金があるから」ということにはなりません。きちんとした工賃をとることになります。で、当然値が上がるわけです。
以前あった例は、プリント用の金属ロールをメッキする工場が高齢化のために閉鎖となりました。で、代わりの工場が手を上げてメッキをすることとなったのですが、価格が1.5倍になりました。ていうか今までどれだけ安くやってきたのか、ということです。
新型コロナウィルス禍が過ぎたあと、いったいどのくらいの工場が残っているでしょうか。
少なくても、今までサービス的な価格で製造してきた工場は残らないと思います。残るのは、きちんと継続できるような賃金をとってきた工場です。
きっとコロナ禍前のような安価な価格では物ができなくなってくるでしょう。
実際に、その傾向が出てきています。
「うんうんわかっているよ、きちんと工賃を払わないといけないよね。でもそれはそれとして今までと同じように安く作る工場はないの?安く作らないと売れないよ。きちんとした工賃なんて建前言ってもしょうがないよね。」
はい、これがほとんどの繊維問屋さんの言葉です。
「え、そんな高い価格なんだ。じゃあいいや、他の工場探すね。」
こうゆうこと言う会社も結構多いです。
「そんな高い価格でいいなんて、工場を甘やかしているよね。さっさと切って他の工場にしたら。」
思い当たる人も多いと思います。
弊社が思うのは、品質に見合った工賃を出すのは当然。
それで売れないのは、弊社の営業力がないから。
様々な工程ごとにある工場達と一緒に前に進んでいくのが弊社の進む道。
工場を大切にすれば、この先も物を作ることが出来ます。
この「コロナ禍」が過ぎた時、製造の川上、川下含めてとても厳しく、業界全体の力が愕然と落ちるのは目に見えることです。
工場を簡単に切ってきたトコロは、それ自体がおかしくなるでしょう。
「業界再編」この言葉が頭の中にちらつきます。