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「きもの」展で思ったこと

先日行ってきた東京国立博物館の「きもの」展。

その展示を見て思ったことをつらつらと書いて見たいと思います。

 

 

こちらに展示されている着物の多くは、一枚だけ作られたオーダーメイド品です。

その当時の権力者、裕福な人々が財力を注ぎ込んで作った逸品です。

 

今回展示された着物の多くは、絵羽柄です。

一枚の着物をキャンパスのようにしてデザインしています。

今の感覚でいうと、Tシャツにプリントしたような感じ(出来上がったものに後から柄をのせる)に見えますが、着物の場合は違います。

 

着物の場合は、仮仕立てをして下絵を描き、その後また解いて生地にして刺繍なり、絞りなどの加工をしてから改めて仕立て直します。

ベースとなる生地は、いくら正絹といえど収縮したりします。当然収縮を考えて加工を行いますが、どうしても若干のデザインのズレが出てきてしまいます。でもそれは仕方ないことです。

 

展示されている着物を見ても、ところどころ柄がずれているところがあります。

 

 

当時の人々は、きっとこれくらいのズレは当然であり仕方ないと思ったのでしょう。

そう思ったからこそ、今でも大切に保管されてきたと思います。

 

でも今、同じような着物を作った場合、多少のデザインのズレは果たして許容されるのでしょうか?

 

というのも、以前オリンピックイベント用の浴衣の問い合わせを受けたとき、このような絵羽柄のデザインを提示されたのですが、公共のイベントのためデザインのズレは一切認められない、と言われたことがあります。

浴衣といえば、正絹よりも収縮が激しい木綿の生地を使います。

木綿の生地を使うコト前提で、デザインのズレも許されない・・・もちろんお断りしたのですが、このような前例の話があると現代では絵羽柄のデザインの物を作るのは非常に難しいと感じました。

せっかく作っても、ここがズレている、これは駄目だからやり直して、とかそうゆうクレームが来ると思うと、最初から作らないほうが良いですから。(きちんと理解してくれる方なら注文受けますが)

 

 

今回の展示をみていて、ふと思ったことの一つ。

この展示、着物業界の人はどれだけ観に来ているのだろうか。

 

実際に手を動かして物を作る職人さんは、けっこう観ていると思いますが、その商品となる着物を企画し製造を手配する問屋さんは観ていないのではと想像しました。

そう、想像した、ということにします。実際に自分の周りの問屋さん関係は、こおn展示会に興味がありません。

 

どちらかというとできるだけ安く商品を作り、できるだけ高く売ることに興味がある方々が多いようです。

いや、商売的には何ら間違ったことでは有りませんし、まっとうな商売のやり方ではあります。

でも、じゃあ着物じゃなくても良いじゃん、ということでもあります。

 

あまり人気のないブログなので書いてしまいますが、着物を扱っている問屋、商社関連の人って、着物が好きな人は少ないです。

実際に、ウキウキして「きもの」展に行くような自分は、とても変わり者になります。

 

なんかなぁ、着物業界が衰退していく理由ってこうゆうことにあるんじゃないかなぁ。

(着物が好きでも嫌いでも無い人が商売しているというトコロ)

 

 

 

 

自分の性格上、ついつい余分なことまで考えてしまいましたが、この「きもの」展、本当に良かったです。

もう一回くらい観に行く機会があればよいのですが。