旅館やホテルのサービスの一つで、宿泊したお客様が好きながらの浴衣を選んで着ることができる、と言うものがあります。
お問い合わせいただくもの「これからは浴衣を選んで着てもらうのが時代だから」、みたいなお話が多く見られます。
うーん、浴衣を選ぶサービスは20数年前からあって、もう目新しいものではないのですが・・・、という内緒話は置いといて、旅館やホテルで使われる浴衣は寝間着仕立の業務用として作られている浴衣で、その浴衣を数種類置くとなるとかなりのコスト高になります。
まして、その数種類の浴衣を気に入った柄の物を指定して作る、というのはとても大変なことで、結局中国製の派手ながらの浴衣の中からチョイスして使う、ということに落ち着きます。
ていうか、ほとんどパターンがソレです。
旅館やホテルで使われる浴衣は、リネンサプライというクリーニング業者さんからレンタルしたもの、もしくは洗濯だけリネンサプライ会社におまかせするパターンです。
赤の他人が素肌に着たものを洗濯してきれいにし、それをまた次の人に出すわけですので、リネンサプライの洗濯はとても激しくしっかりとしたモノなのです。そのため旅館・ホテルなどで使われる浴衣は、高い耐久性をもたせて作られています、少なくとも日本製では。
弊社もプロとして、浴衣の生地、使われる顔料、仕立てだけでなく、色の使い方、デザインにも最新の注意を払います。
先に挙げた中国製の浴衣、これはパッと見た時に見栄えする柄で作られています。で、最近は和服をあまり着ない方々が旅館やホテルを経営していたりするので、「この柄いいね」で採用するのですが、実のところ耐久性を考えて作られていませんので、使っているうちにすぐにおかしくなってしまいます。
しかも最近の中国製の浴衣も値が上がっていますので、日本製とほとんど変わらなかったりします。
先にも書きました、洗濯はリネンサプライで行います。
上のカタログの写真のように、中国製の浴衣は様々な柄があります。
と言っても、人が良いなと思う柄はどうしても偏ってしまいます。
「選べる浴衣」サービスを行っている旅館・ホテルが数軒有ったとします。（実際あるのですが）
それぞれの旅館・ホテルで使われた選べる浴衣がリネンサプライに入ってきます。当然、昔のように浴衣には旅館やホテルの名前は入っていません。
簡単に想像つくのですが、どの旅館・ホテルから出てきた浴衣なのかは見分けが付きません。
洗濯から乾燥、仕上げまで、他の旅館・ホテルのものと紛れないようにしないといけません、まったく同じ柄の浴衣を、です。
しかも中国製ですので早く痛みます。
きれいにして納めた後に「コレ痛みが激しいけど洗濯が悪いんじゃない？」と言われる可能性もあります。
この中国製の浴衣を使っての「選べる浴衣」サービスは、リネンサプライ泣かせのサービスと言えます。
ついでに言ってしまうと、これだけカラフルな柄だと同じ柄で似合う人似合わない人が出てきます。
しかしせっかく旅行という非日常の場面ですので、どちらかというと派手な柄を選んでしまう傾向があるようです。
簡単に言うとコスプレ感覚。コスプレも良いですが、必ずしも似合っているわけでは有りません。
更に仕立てが「寝間着仕立て」なので、同じような柄でも着物のように見栄えの良いものではありません。
日本人が屋内できれいに見えるのは、白地に紺色の浴衣です。
旅館やホテルの浴衣は寝間着として出されたものです。
だったら心が落ち着くようなデザインの浴衣の方が良いと思うのですが。
と、まぁ、勝手な意見を最後にちょっと書いてしまいます。