旅館やホテルで使われる寝間着仕立ての浴衣は、耐久性の高いディクセル方式顔料プリントで行われます。
新規の注文があった場合、プリント工場では色づくりから始めます。
よくある誤解は、「定番の赤とか黒とか青とかの色があって、それ以外の色は使えない」みたいな事があって「プリントできる定番の色は何色があるんですか?」と聞かれることがあります。
もちろん定番の色もあるにはありますが、基本的にはその都度色を作ってプリントをします。
色づくりの最初は、ビーカーで色を作るところから。
布に付けて色を見ながら色の調合をしていきます。
その際、「○○色が○%」と割合を記述しながら調合していきます。
※掲載の画像は、違う浴衣制作案件の画像をそれぞれ集めたものです。
調合を何度か繰り返し、お客様から指定された色に突き合わせて色を決めます。
で、僕が工場に行くのはこの時点で色の判断をするため。微妙な色の差異を現場の職人さんの責任にすべて負わせてしまうのではなく、発注者である自分がきちんとお客様が希望している色かどうかを判断し、出来上がった色に対して責任を負うためです。
このビーカー染めを基に実際に使う色を調合します。
少ない数量で浴衣を作る場合でも、最低必要な顔料の量があります。
最低これだけの量がないと、機械がきちんと動きません。
なので少ない数での注文では、作ったほとんどの顔料を破棄しなくてはいけなくなります。
これで本番のプリントを、というわけにはいきません。
実際にプリントの機械を動かし、1mくらい試しプリントを行います。
旅館やホテルなどで使われる浴衣のプリントには、「ロータリースクリーン」と「金属ロール」の二種類のプリント方法があります。
同じ顔料を使っても、プリント方法が違うと色が違ってきます。
また、プリントする生地の具合でも違ってきます。(国産、輸入品や晒方法など)
試し染めで、きちんとお客様が希望されている色が出てから、本番のプリントを行います。
もちろん希望されている色が出ないと、何度も繰り返し試し染めを行います。
色が決まるまで、自分も工場にて確認をしています。
かなり細かい制作方法の話ですが、こうゆう苦労の上に物が作られている事を知っていただければありがたく思います。