「志多ら」様、というより個人的には志多らさんと言ったほうがしっくりきます。
2012年の「蒼の大地」公演の時、友人から誘われて見たのが始まりでした。初めての和太鼓のステージに、ただただ圧倒されたことを今でも覚えています。その後、その友人が志多らさんの応援をしていたこともあり、自分も浜松や磐田市の公演の宣伝を手伝うようになりました。
一昨年の夏の磐田市公演の宣伝のお手伝いをしている時、「今まで舞台衣装を作ってくれたところが色々あって・・・。石津さんお願いできます?」と相談を持ちかけられました。
正直、仕事の依頼ですので嬉しかったのですが、舞台衣装としての法被です。普通の法被とは仕様が違うことは簡単に想像できます。
とりあえず一枚実物を見せていただくことにしました。
実物を見て思ったのが、生地がとにかく厚い事。
その話をしたところ、舞台で激しく動くのである程度の重さがないと演奏しづらいとのこと。
これだけ厚い生地を使って作るのは、一般的な法被を作っている浜松市の工場でできるか・・・うーん、ちょっと難しいかな。
ふと思いついたのが、福岡県の引染屋さん。
幟旗や幕を始め、暖簾から手ぬぐいまで作っている工場です。しかもきちんとした仕事をしてくれる信用のできる工場です。
その引染屋さんにお借りした実物の法被を送ったところ、「大丈夫!できるよ」との返事をいただきました。
志多らさんからお借りした法被は、豊橋市の工場で作っていたそうで、硫化染料を使った防染で染めていたとのこと。
今回は、型を上において染料を置いていく引染めで染めていきます。
引染なので防染よりも線などがきれいに出てきます。
さらに今回志多らさんの希望は、サイズごとに柄の大きさを変えて欲しいとのこと。
舞台に上がった時、色々な身長の演者がいますが、それでも違和感なく柄が見えるようにして欲しいとの事です。
もともと引染は簡易的な型を使って手作業で染めていきますので、簡易的な型の大きさを変えて作ってくれることになり、それも問題なく出来ることとなりました。
ですので、Sサイズ用の大きさ、M・Lサイズ用の大きさ、LLサイズ用の大きさの三種類、全て柄の大きさが異なります。
生地は、神社幟などに使われる厚手の天竺木綿を使用します。
出来上がった後の縫製のやり直しなど問題もありましたが、何とか2021年3月の豊橋公演までに間に合わせることができました。
この豊橋市での公演、自分も観に行きました。
新型コロナ禍の影響で、本当に久方ぶりでの公演でした。座席も一つおきに、志多らの演者さんたちとのふれあいも控え、色々と大変な公演でしたが、舞台の上では今まで通りのパワフルな演奏が繰り広げられました。
何よりも自分が手掛けた法被を見て、本当に感激。胸が詰まって自然と涙が出てきました。完成までに色々あったけど、こうして公演を無事に迎えられて本当に良かったなぁ、と。製作者冥利に尽きる、とは、本当にこのことでした。
まだまだ新型コロナ禍が続きますが、志多らさんも新しい活動の場を広げていく予定です。
弊社も微力ながらこれからもお手伝いさせていただければと思います。