· 

新型コロナ禍の影響

新型コロナが猛威をふるい始めてから約一年半。

繊維業界も非常に厳しい状態が続いています。

 

元々繊維業界の状況は新型コロナに関係なく毎年毎年厳しくなっており、いずれは日本国内の繊維産業は廃れていくのではと考えられていたのですが、今回の新型コロナ禍でそのスピードが早まった感じがあります。

 

 

元々この繊維業界に携わっている人の平均年齢は非常に高く、中でも実際に製造に関わっている人の多くが年金支給対象者だったりします。今までは仕事の流れで歳をとっても仕事を続けてくれた方が多かったのですが、新型コロナ禍のために仕事が途切れてしまい「もうここらへんで良しとしようか。仕事をたたもうか。」という状況が多く出てきています。

 

 

今年(2021年)3月末で、地元の本仕立ての浴衣を縫製している工場が終わりました。

理由は「仕事がないから」。

多分ですが、本当のところは「仕事が無いし、でも年金があるから無理して続けなくても良いか。」かなと。

 

地元の本仕立ての工場が無くなったため遠方の工場に出すこととなり、工賃が上がり運賃が別途かかるようになり、結果原価も上がることとなりました。

ただ、まだ良いのはお金を出せばやってくれるところがあるということ。

いずれお金を出してもやってくれるところが無くなると、本当にお手上げ状態になります。

 

 

 

新型コロナが出てくる前にも色々な工場が閉鎖しています。

 

・小巾生地の整理工場

・スレン染めができる染色工場

・糸を染める工場

・糸の糊付け工場

 ・

 ・

 などなど

 

繊維業界は細かな分業制で成り立っている業界ですが、その中の細かな部分を受け持っている工場がどんどん無くなっていました。

新型コロナ禍でそのスピードが一層加速しています。

 

元々かなり工賃の安い業界で、でも昔からの縁もあるし年金もあるからお金は安いけどやってあげるよ、みたいな好意で成り立っていた業界です。

 

ある旅館浴衣専門の縫製屋さんの話。

「○○から袋の縫製やって、って言われたけど他の仕事は全然ないし、工賃安くてガソリン代も出ないから断っちゃった。もう仕事が無いのにも慣れちゃったから、このまま終わろうかな。」

 

 

仕事を出す方にも問題があるのかな、とも感じます。

 

ある名古屋の注染工場が非常に安い工賃で注染手ぬぐいを染めていたそうです。

そこの社長は90歳を超えるおじいちゃん。言葉通りの安かろう悪かろうの工場で、色はバラバラ、染めムラ、汚れもあるような工場だったそうです。

でも安いから、とたくさんの問屋がそこに仕事を出していました。

数年前におじいちゃんが亡くなった(?)かな、とにかく工場を止めたそうです。

じゃあ、ってことで今まで仕事を出していた問屋さんたちは他を当たるのですが、いずれも工賃が高くて(というより普通の価格)どこにも価格が合うようなところ無い。

弊社にも色々なところから問い合わせを受けました。非常に安い価格を言われるため、全て断りました。

結局、その安い工場に仕事を出していた問屋さんたちは、注染の注文を受けなくなったようです。

 

 

なんだろう、とにかく安く安く、品質よりも価格重視というのは色々な問屋さんと話をしてとても感じます。

もし自分が物をつくっている職人だとしたら、品質よりも価格を安くなんて言われたら仕事を続ける気がなくなります。

自分の技術をバカにされているだけではなく、価格だけでやっていたらいずれもっと安いところに取って代わられる心配もあります。

そんなことばかり要求される業界なら、さっさと違うところで働くでしょう。

 

こんな状態の繊維業界です。

若い人が定着しにくいのも納得です。

 

 

 

新型コロナ禍の中、結局残っているのは「高い」と言われ続けながらもきちんと工賃をとっている会社です。

やはり長く仕事を続けるには、仕事にたいしてまっとうなお金をいただくことが大切だと感じます。