旅館浴衣に使われるのは、ディクセル方式の顔料プリントです。
毎日毎日洗濯をして使われるのが旅館浴衣です。
なので一般的な顔料プリントではすぐに色が落ちてしまいます。
染料なら一般的な顔料プリントよりも耐久性はありますが、漂白剤や殺菌剤に弱いので洗剤のみで洗濯することになります。
一般顔料で色がすぐに落ちてしまうか、誰が着たかわからない漂白も殺菌もしていない浴衣を着るか。
そう考えると、やはり業務用のディクセル方式顔料プリントを選ぶしかありません。
ただこのディクセル方式顔料プリント、万能ではなく色々と欠点もあります。
よく問題になるのは「色の深さ」。
一番深い色が出るのが染料で、次が一般的顔料プリント。ディクセル方式顔料プリントはどうしても浅い色になります。
とくに色の深さがよく分かるのが、濃紺などの濃い色です。
ディクセル方式顔料プリントは、染料に比べて白っぽくなります。
屋内の光だけではなく太陽の光に当ててみると、その差は一目瞭然。
うっすら表面が白っぽく見えてしまいます。
これはもう顔料の性質上仕方ない事です。
じゃあなんとかして濃い色を出してみよう、というのではなく濃い色は白っぽくなるのなら他の色を使おう、というのが基本的な旅館浴衣のデザインになります。
さらに濃い色が広範囲でベタで乗っていると風合いも固くなり、また洗濯を繰り返すと毛羽も目立ってきてしまいますので、どうしても濃い色をベタ(広範囲)で使いたい場合は地紋を入れるなどの工夫をします。
最近の傾向として、旅館浴衣に限らず濃い色に白抜きするデザインが好まれるようです。
で、先に上げたように濃い色の場合は白っぽくなってしまいますが、それがクレームとされてしまいます。
どうやったって染料みたいな色は顔料では出ません。
あと細かい話ですが、顔料は色ごとに濃度、粘度が異なります。
一般的には濃い色ほど濃度、粘度は高くなります。
さらに細かい話ですが、濃度、粘度が違うと生地によってプリントされる色が異なってきます。
よくわからない話に聞こえますが、簡単に言うと同じ濃紺でも綿生地と化繊混紡生地とでは違う色にプリントされます。
同じように絣をイメージした柄ですが、TC(化繊混紡)生地は色が薄くなってしまいました。
このTC生地へのプリントは非常に難しくて、絣柄を再現しようと濃い色を使い、プリントの際に型の中の○○を変えて細かい柄を出そうとするとプリントされた生地色は明るく薄くなり、じゃあって型の中の○○を○○にしてみると絣が潰れてしまいます。
さらに思ったほど色も濃くありません。※○○は企業機密になります。
このとき、プリント工場にて立ち会って部品の交換、その後のサンプル生地のプリントもみて、色々なパターンで試してみたのですが、綿生地のようなプリントにはなりませんでした。
もうね、職人さん総出、社長も出てきてあーでもないこーでもない、とやったけど無理でした。
染料プリントより顔料プリントのほうが簡単に色が出せる、という認識でしたが、やはり顔料プリントも難しい。
結局、前例のある色、柄でしたら無難に大丈夫、ということで「今までに無いものを!」となるとリスクが出てきます。
上記のように思ったようなプリントができない場合も出てきます。
新規オリジナルのデザインの場合、濃い色のベタは避けたほうが無難でどうしてもという場合はリスクが生じるとご了承いただけるとありがたく思います。