「アイロンがけしなくても良い旅館やホテルで使う浴衣ってありますか?」
簡単に説明しますと、
・洗濯したあとに乾燥機にかけて、そのままたためる浴衣は有りませんか?
・洗濯しても乾燥機にかけてもシワが出来ない浴衣は有りませんか?
・できればオリジナルのデザインで作りたいのですが。
という意味合いのお問合せを時々いただきます。
上記の条件に近い浴衣はあります。
けど、弊社では扱っておりません。
なぜか。
もちろん、扱わないには理由があります。
「アイロンがけしなくても良い」ということは、”アイロンがけしなくてもシワがない=シワがつきにくい素材で出来ている”ということになります。
シワがつきにくいのは、「化学繊維」になります。
化学繊維で作られた浴衣、確かに有ります。
出張中に泊まったホテルで出てきたこともあります。
まず化学繊維100%の生地を仕立てるには、専用のミシンが必要です。
木綿を縫うミシンでは、生地が滑る、収縮するなどの不具合が起きてしまうので縫えません。
じゃあ、化学繊維専用のミシンを持っている縫製工場は、というと洋服などを縫うアパレル系の縫製工場になります。
アパレル系の縫製工場は当然「洋裁」の工場です。
浴衣は「和裁」です。
「洋裁」の工場では基本的に「和裁」はできません。
「和裁」のできる「洋裁」工場で縫製できれは問題ないのですが、当然特殊な技術を持つ工場ですのでその分の工賃UPは当然です。
縫製を心配する前に、オリジナルデザインで作りたい場合、化学繊維100%の生地は、旅館浴衣専用工場ではプリントできません。
通常の旅館浴衣専用工場は、基本的に木綿プリントです。
水溶性の顔料を使っている以上、化学繊維100%ですと顔料が弾いてしまいプリントできません。
なら化学繊維にプリントできる”分散染料”でプリントすれば良い話ですが、ロットがかなり大きくなります。
最低でも500枚、もしくは1000枚くらいは欲しくなります。
”分散染料”でのプリントは、アパレル系の工場になりますので、工賃も高くロットも大きくなります。
はい、ここまでは制作側の問題点です。
じゃあ実際に製品を使う場合の問題点は・・・
化学繊維100%の生地で作った衣類は、乾燥機に入れた時に静電気がものすごく発生します。
経験したこともあるのですが、トラウマになるくらいバシッときます。
二度と触りたくなくなるほど乾燥機自体が静電気を帯びます。
乾燥しすぎると発火する危険性もあります。
事実、リネンサプライなどでも乾燥機からの発火事故が時々起こります。
化学繊維100%の衣類は、腰がないためたたみに時間がかかります。
しかもきれいにたためません。
衣類、衣類と書いていますが、浴衣の場合通常の衣類よりも大きなモノになりますので、たたむのは苦労いたします。
で、他にも大きな問題があります。
「臭い」
何でかは知りませんが、化学繊維100%のモノって、最初は良いのですが使い続けていくと臭くなります。
繊維の中に臭いが閉じ込められてしまうのでしょうか、洗濯しても洗濯しても臭いが取れません。
もうね、垢や汗を煮詰めたようなあの臭い、我慢できるものじゃあありません。
いつまでも鼻につきます。
「臭い」が来ない新しいモノでも、化学繊維は汗を吸い取りませんので、非常に寝苦しくなります。
実際に使ったとき、寝ている途中で気が狂いそうになりました。
最初は気にしていませんでしたが、非常に不快です。
あんなに不快な衣類は初めてです。
僕だけかと思ったら、着たことのある人口々に「不快だ」「あんなモノ着られたモンじゃない」とおっしゃります。
あんな浴衣を出すトコロには二度と泊まりません。
と、これだけの理由により、弊社では「アイロンがけしなくても良い旅館浴衣=化学繊維の浴衣」は扱っておりません。
作る人、洗う人、着る人みんなが困る浴衣です。
またこれだけ問題点があって、高価な浴衣を使う意味がどこにあるでしょうか。
今ここで上げた欠点以上に、アイロンがけしなくてもよい利点があるのでしょうか。
と書きましたが、実際今までも色々なメーカーが化繊100%で浴衣を作っています。
作っては消え、また別のメーカーが作っては無くなり、ということが繰り返されています。
もしかして化学繊維100%の浴衣は、憧れの浴衣なのでしょうか?
(まぁもし出てきても自分は絶対に着ませんが。)