「オリジナルの浴衣がほしいんですが、1枚いくらですか?」
よくいただく質問です。
どんな浴衣かわからないのに値段なんて出せません。
・ご希望されている浴衣は、旅館やホテルで使う浴衣ですか?それとも夏祭りや花火大会などに着て出かけるようなゆかたですか?
「え!?じゃあ、夏祭りに着ていくような浴衣で。」
・では、枚数は?
「はいはい、1枚です。すぐにできます?」
・急ぎですか?
「10日後くらいに使いたいんです。」
・それはちょっと無理ですね。
「”ガチャン”」
電話が切られました・・・
効率的かなんか知りませんが、できないとなると電話をすぐに切るのはちょっと失礼でコチラもカチンときたりします。
でもその前に、10日後に使いたいからオリジナル柄で浴衣を作りたいって、これはかなり無理無茶な話です。
モノづくりを知らないにも程があります。
と思っていたら、また電話。
「オリジナル浴衣を1枚だけ作りたいんですが、お願いできますでしょうか?」
・どのような仕立ての浴衣ですか?旅館やホテルで使う浴衣ですか?それとも夏祭りや花火大会などに着て出かけるようなゆかたですか?
「夏祭りや花火大会で着るような浴衣です。」
・お急ぎのようですが、いつお使いになられたいんですか?
「10日後には使いたいです。」
(さっきと同じ話だなぁ)
・10日後ですとちょっと無理ですねぇ。生地をインクジェットでプリントして、最短で2週間、そこから仕立ててもすでに10日以上かかります。
「え~~・・・無理ですか。いくらかかっても良いと言われているんですが・・」
・いや値段的な問題じゃなくて、もう時間が足らないんです。
「わかりました。どうもありがとうございます」
多分、最初に電話かかってきたところと出所は同じでしょう。
色々な代理店に聞きまくって、それぞれの代理店が弊社に問い合わせてきたと思いました。
本当に日本って物が作れなくなってきたんだな、と先のような電話を受けるたびに思います。
モノを作るにどのような工程が必要で、どのくらいの時間がかかるのかの想像ができなくなっています。
必要なものは店に行けばすぐに手に入る、という社会だからでしょうか。
「いくらかかっても良い」なんて漫画みたいなセリフが出てくるあたり、もう関わりにならないほうが正解です。
ちなみに自分の勘ですと、先の二件の電話の案件、デザインが決まっていないもしくは絵羽浴衣じゃないのかと思います。
勘ですよ、あくまでも勘ですが。
で、その勘が当たっていた場合、作るのに最低1ヶ月半コース・・・ともてじゃないけどすぐにはできません。
正直、「10日後に使いたいんですが・・」という話は、他でもできませんので安心してお断りできます。
ネットで出ていたという最短のインクジェットプリント工場では7日で生地が出来上がるそうで、それって土日を入れたら9日かかることとなります。で和裁士さんにお願いしたとしても、水通しと裁断、縫製となると・・・うん、やっぱり無理。
でもなんだろう、そんなに急いで浴衣が欲しいなんて。
TVかな、映画かな、けっこうメディア関係って日にちが限られているから。
何とかできるものなら何とかしたいけど、なんともならないからなあ。