旅館浴衣と本仕立浴衣の大きな違いの一つが、”袖”の形の違いです。
本仕立の浴衣は”たもと”がありますが、旅館浴衣はたもとの無い”筒”になっています。
この旅館浴衣の筒状の袖のことを「筒袖」と言います。
ですが最近、特に中国製の浴衣(選べる浴衣サービス)は、小さなたもとが作られていたりします。
浴衣に憧れる人たちが、普段着られない浴衣の代わりにそれっぽい旅館浴衣を着たい憧れがあるのでしょうか。
でも、昔からの旅館浴衣が「筒袖」なのにはきちんと理由があるのです。
「筒袖」とは、実は旅館浴衣専用の袖の形ではなく、江戸時代でも農民や漁民など肉体労働する時に着る衣類の袖だったりします。
簡素な袖的な意味もありますが、動きやすい、洗濯しやすいと行った実用的な意味もあります。
旅館浴衣としては、元々寝巻きですのでたもとがあると寝返りを打つ時にたもとが身体に巻き込まれてそこから破れてしまうと言う点と、毎日洗濯して使うものですので洗濯しやすく干しやすいという点もあったりします。
特に旅館浴衣は業務用の大掛かりな洗濯機で洗うものですので、洗濯しやすい、汚れが落ちやすいという点は非常に重要になります。
「じゃあ本仕立ての浴衣はたもとがあるけど、それで良いの?」となるかもしれませんが、本仕立の浴衣は基本的に個人で所有して着るものですし、そのまま洗濯機でガラガラ洗うものではありませんので、たもとが有っても問題にはなりません。
結局、旅館浴衣は筒袖が一番良い、ということなのですが、じゃあ何故たもとのある旅館浴衣があるのかというと、使い勝手よりもそのほうが見た目が良さそうで売れる、という点だけです。
浴衣や着物を普段着ない人が増え、でも着物や浴衣を着てみたい人もたくさんいて、そんな人達が着物や浴衣の代わりに旅館浴衣を着てなんとなくその欲求を紛らわしているわけで。そうなると旅館浴衣の形も本仕立に近づけたいと思い、一番目につく”袖”にたもとをつくってみたりする、という事だったりします。
でもね、その旅館浴衣のたもとの中を見てみると・・・もう見なきゃよかったと後悔する光景が有ったりします。
そんなのを見てしまうと浴衣に袖を通せなくなってしまいます。
ホント、筒袖だったらそんな事無いんですが。
旅館浴衣らしい旅館浴衣って、最近避けられる傾向があるように思われますが、一つ一つにきちんと理由があります。
きちんと「寝間着として使うための浴衣」として出来上がっているものなのです。