”新型コロナ禍が一段落し、今まで落ち込んでいた経済を取り戻そうと経済活動が活発になってきています。
ですがロシアとウクライナの戦争や台湾危機など世界情勢は悪化し、改善の気配は見られません。
また日本国内も物価の上昇が止められず、経済復興の大きな枷となっています。”
ということは、TVでもしょっちゅう言っているし、誰もが知っている事です。
いろいろなモノが値上がりしていて、スーパーに行けば軒並み商品が値上げ、100円均一だって空いている棚が出て生きている状態です。
そんなのみんな知っているのに、なぜ浴衣の製造コストが上がっているのは知らないフリをするのでしょう。
今この記事を書いている、2022年10月末時点の状況ですが、
「浴衣の小幅生地は、今年1月の時点と比べて500~600円値上がり」 しています。
「生地代だけでなく、染料・顔料価格も値上がり」 しています。
「電気代なども上がっているため、縫製工賃も値上がり」 しています。
そりゃあ、原料の綿花価格も上がっているし、日本に輸入してくる時の輸送コストだって上がっているし、日本国内の電気代だって上がっています。
逆に聞きたいのですが、値が下がる要素はあるのでしょうか?
今、新型コロナ禍から抜け出し経済復興の風潮が徐々に出てきています。
それに連れて浴衣の注文も出てきています。
最近よく耳にする話は、
「今年の夏向けに浴衣を数百枚注文受けたけど仕立てるトコロがない。どこか安くやってくれるところは無いか?」
ポイントなのは、「安く」です。
「浴衣」でも「着物」でも本来仕立て(縫製)が出来る人は、お誂えで注文を受けて仕立てをします。
お誂えで仕立てた場合、縫製工賃は1枚あたり15,000~20,000円もらいます。
けど工場で働いて浴衣を仕立てた場合、2,000円~4,000円くらいでしょうか。
本来1枚縫って 15,000~20,000円もらえる人が、なんで2,000円~4,000円の仕事をするのでしょうか。
そりゃあ、工場は裁断は別でやってくれるとか仕事がまとまってあるとか、色々と状況は違います。
でも15,000~20,000円もらえる技術を持っている人が、2,000円~4,000円で浴衣を縫ってくれているという状況を見ようとしていない、じゃなくて目に入れず、知らん顔しているのが仕事を請け負う問屋、卸の状況です。
今、新型コロナ禍の間に、安くやっていた工場がどんどん廃業してしまいました。
元々安く仕事をしていたのは、高齢で昔から仕事をやっていたから今も昔と同じ値段で良いよ、自分たちは年金で食べていけるから仕事はボケ防止だよ、みたいなところが多かったのです。
新型コロナ禍で仕事が途切れてしまった時、工場開けていても経費はかかるしヤル気も無くなったし、もう工場を閉めようか。って感じになってしまいました。
改めて見てみると、今残っている工場は経営が続けていけるようにきちんと工賃をとっていた工場のように思います。
「今まで人ごとのように言っているけど、じゃあお前の会社はどうなんだ!!」
と言われるかもしれません。
ウチの会社は、基本的に工賃を値切りません。
その代わり、普段から工場と密に連絡を取りあい、無理のない状況で縫製をお願いしています。
今、縫製工場が少なくなり、工賃も上がっていて、製造量が増えてきています。
縫製工場の立場として、
「工賃をいつも値切ってきて、納期もギリギリで行ってくる会社」と
「工賃は希望通り、納期も無理のないところで合わせてくれる会社」のどちらの仕事をしたいと思うでしょうか。
「仕事を出してやっている」態度の会社と、「仕事はお互い様」という態度の会社のどちらの仕事をやりたいと思うでしょうか?
新型コロナ禍の前から、ウチの会社は工場との関係を大切にしてきました。
お互いの信頼があるので、急な仕事も様々なトラブルも乗り越えられたと思っています。
「新型コロナ禍前と同じように、安く安く物を作る」風潮の会社は、これからとても大変だと思います。
そうそう、中国の台湾進攻の危険性が高まる中、中国に製造拠点をうつした会社は有事の際にはどうするのでしょう。
以前尖閣諸島問題で日本と中国が揉めた時、日本向けの荷物が中国の港で数ヶ月足止め食らったことを覚えているのでしょうか。
いや、覚えていないでしょうね・・・
同業者をみていると、「そのときはそのとき」主義がけっこう多いように見られます。