「オリジナルの浴衣を作りたいんですが、浴衣の生地って何色があります?」
「紺色の生地に白をプリントしたデザインにしたいんですが・・・」
「ピンク系の浴衣の生地ってありますか?」
「浴衣の生地、全色送ってもらうってできますか?」
お客様からの問い合わせでよくある質問を並べてみました。
結論から言うと、本仕立てでもインクジェットでも中殿でも旅館浴衣でも、生地の色は白しかありません。
白い生地しか無いのになぜ色々な色の浴衣があるのかというと、その都度染めたりプリントしたりしているからです。
実はこのあたりの感覚が業者とお客様の違いで、一から染めたりプリントしたりするとなると急に腰が引けてしまう方が多いようです。
こちらとしてはお客様それぞれで希望される色やデザインが違うわけですので、その都度色を付けるのが当たり前だし、そうでないとお客様の希望に対応できません。
あらかじめ色のついた生地を作ったとして、その色がお客様の希望通りの色なのかというと多分違うでしょう。
使うか使わないかわからない色生地を在庫しておくより、その都度色を付けたほうが良いと言えます。
また、あらかじめ色の付いた生地の上にデザインを乗せた場合、乗せたデザインの色が下地の色に左右される場合もあります。
特に上のデザインが薄い色で下地が濃い色の場合は、乗せた色が汚く見えてしまいます。
例えば紺色の生地の上に、白とか黄色とかピンクとかの薄い色を乗せた場合、下地の紺色が透けてしまいます。
じゃあ透けないように厚手のプリントにすればよいのか、というとプリントの厚みの分だけゴワゴワの風合いになってしまいます。
浴衣として着やすい風合いにするためには、白い部分は染まらないようにして、生地の色をそのまま生かしたほうが良いと言えます。
(下地の色に影響されるのを逆手にとり、上の色を甘くて良い感じにするということもできますが、そればまた今度・・・)
旅館浴衣の場合、基本的に毎日洗って使うものですので頻繁に洗濯することが前提です。
紺とか、焦げ茶とか、黒とか、濃い色の下地は毛羽がすぐに目立って、それほど使っていないのにみすぼらしくなってしまいます。
それを防ぐように濃い色の部分が多い場合は地紋を入れるのですが、もし色の生地を使った場合は地紋が入れられません。
地紋を入れるには、白い生地に地紋入りの下地をプリントするしかありません。
浴衣の場合、白い生地をその都度染めたりプリントしたりするほうが無駄がなく、効率的であることがわかったと思いますが、逆になぜ「浴衣の生地って何色がありますか?」みたいな問い合わせが多いのかと考えると、オリジナルで衣類を作る=Tシャツやチームブルゾン、みたいな感覚だからでしょう。
実際に、「浴衣の生地って何色がありますか?」の問い合わせと同じように多いのが「胸にワンポイント入れたいのですが」みたいな問い合せだったりします。
上のカタログのように、浴衣も出来上がったものが色々とあってその出来上がり品にプリントするイメージで問い合わせをしているような気がしています。
Tシャツやブルゾンはオリジナルを作る前に、普段から着ている人が多いと思いますが、浴衣も同じように呉服屋さんや着物屋さんで作って着てみるとよく分かるのですが。(どのような手間があり、どのくらいコストがかかるのかが理解できます)
やはりあまり着たことのない物を作ろうとすると、なかなか上手く行きません。自分の思い通りに行かないからといって拒絶するのではなく、理解してから作るほうがより良い物ができると思います。