新型コロナ禍が一段落しいつもの日常が戻ってきましたが、新型コロナ禍の影響からはなかなか抜け出せていません。
新型コロナの影響がいかに深刻だったのか、今更ながら感じています。
ざっくりというと、「物が作れない」。
人手不足、原料不足、が非常に深刻です。
うん、字面にしてみると他人事っぽい感じ。
でも今までの経験にないくらい物が作れなくなっています。
浴衣を作りには、「生地を染める(プリント含む)」と「仕立てる」の工程に分かれますが、全てに必要なのが”布”です。
その白い布がありません。
基本的に浴衣は、本仕立ても旅館浴衣も、小巾の生地で作られます。
この小巾生地がありません。
本仕立て・注染などで使われている「特岡」規格の生地は、問屋さんがきっちりと在庫を握っていて、今までだったら「生地問屋さん、今度の注文で100反欲しいんだけど。」「はいよ、じゃあ今週末には工場に入れるね」だったのが、その生地がありません。
旅館浴衣で使われる「別岡」規格の生地は、問屋にも無く、工場にもなく、でも生産は続いている。じゃあいったいどこにあるのか、本当に幻の生地のようになっています。
でも実際は新型コロナ禍を乗り越えるため、工場の人員削減、資産の売却などできるだけの事をして生き延びた工場に、生産量以上の注文が入っているための結果です。
例えて言うと、以前は月産1000反できたのが、新型コロナ禍を乗り越えるために月産500反までに落としたところ、現状2000反の注文が来ている、という感じです。
旅館浴衣の場合、注文から出来上がりまで約半年かかってしまっているのが現状です。
浴衣を作るのに色々な工程がありますが、その中で一番混んでいるのが注染工場です。
注染工場では浴衣だけでなく手ぬぐいも染めます。
新型コロナ禍で職人が減っていたところに、インバウンドの復活などで手ぬぐいの注文が颯爽しています。
弊社では、浜松だけでなく大阪の工場ともやり取りしているのですが、大阪は今年3月以降新規の注文を受け付けていないとのこと。
浜松ではそんな事ありませんが、納期は今までの倍以上かかっています。
(今まで3週間で出来上がっていたのが、2ヶ月かかる場合も)
注染は職人さんの手作業で染められますので、簡単に生産は上がりません。
人の技術が上がらないとできない仕事ですが、人の技術ってそうそう上がるものではないですから。
人手不足、材料不足は浴衣だけじゃありません。
旅館やホテルで使われる羽織も納期半年ですし、帯も時間がかかっています。
国内の繊維業界は高齢化が進んでいる斜陽産業。
そこに新型コロナ禍が来て、減産減産となりやめていった人、やめてしまった工場がたくさんあります。
いままでギリギリで持っていたことがなくなり、もう戻れなくなっています。
なので「いくら上乗せすれば早くできる?」とか言われても、できないものはできなくなっています。
ましてできないのがわかってから、「そうは言ってもどこか安くできる工場があるでしょ」みたいに言われてもできません。
浴衣を作る繁忙期は6月でしたので、そろそろ色々な工場も空いてきただろう、と思っていましたが状況はまったく変わっていません。
春くらいに「このまま行ったら浴衣の納期半年になったりして」と冗談を言っていましたが、冗談が本当になった気がしています。