旅館やホテルで使われる浴衣には、決まったサイズがありません。
Mサイズでも、各旅館・ホテルで丈が異なります。
(旅館浴衣のサイズの違いは”丈”だけです)
決まったサイズがないということは、各旅館・ホテルごとに来られるお客様に合わせて作ることができるということです。
若い人が多いトコロはMサイズでも大きめに。お年寄りが多いところは、逆に小さめに。
弊社でよくご提案するのが、宿泊されるお客様の年代を聞き、統計庁のデータから平均身長を出して浴衣の丈を決めていきます。
ただ、基本的にはあまり細かなサイズ分けはしません。
100枚だったら、「M50枚、L50枚」とか「S20枚、M40枚、L40枚」といった感じです。
あまり細かくサイズを分けると管理が大変ということがあります。
やはり旅館・ホテルで使われる浴衣は、寝間着として使われるものですので、本仕立ての浴衣のようにきっちりとしたサイズでなくても良い、という事があります。
細かくサイズ分けをする旅館というと、有名なのが「加賀屋」さん。
確か5cm刻みでサイズ分けしていたような・・・
その理由が、すべてのお客様が浴衣を着たとき、くるぶしのすぐ上に裾が来るようにしたい、と聞いた覚えがあります。
ただ管理がものすごく大変で、細分化されたたくさんのサイズがあったそうです。
でもコレができるのもそれなり料金を取る高級旅館なわけで、浴衣の金額も割高なわけだし、あとその5cm刻みの浴衣のそれぞれも数十枚~100枚前後ずつ準備していたらしく、一回の浴衣の注文も1,000枚とか2,000枚だったとか。
はたして今でも細かなサイズ分け、やっているのかなぁ、やめたような話も聞いたような・・
旅館浴衣は工業製品ですので、同じものを大量生産するのに特化しています。
なのでサイズを細かくするには余分な手間がかかることになります。
大体ですが、100枚の場合は2、3サイズの作り分けをし、200枚で5サイズくらいの作り分けが一般的です。
旅館やホテルで使う浴衣の作り枚数ですが、収容人数の5回転分の数がよく作られます。
収容人数20人だったら100枚。30人だったら150枚。
その数量の中でサイズ分けするのですから、あまり細かいサイズ分けですと、使っているうちに不足してくるサイズも出てきます。
なので細かいサイズ分けをするのなら、収容人数の6、7回転分は必要になってきます。
細かくサイズ分けをする場合、リネンサプライで洗濯をお願いしているのなら、できるだけ一目でわかるようなサイズ表示も必要です。
よくやるのが、襟の下にバイアステープを付けること。
サイズごとに色分けしたバイアステープをつければ、もし違うサイズの浴衣が混ざってもすぐにわかります。
「旅館やホテルで使う浴衣のサイズの違いは丈だけ」なんですが、全部同じ大きさで作って最後に裾をカットしているわけではなく、オクミの長さや襟の長さも調整して裁断するため、一つ一つのサイズごとに裁断をし、縫製をしていきます。
基本的にはサイズごとの枚数も20枚、30枚といったある程度まとまっている数があるため、特に問題なくできるのですが、特殊なサイズの浴衣を少量作る場合、手間がとてもかかってきます。
通常浴衣の裁断をする場合、裁断台に生地を伸ばしていき、まとめて裁断していきます。
例えば20枚分となるとそこそこの厚みまで生地を重ね、一気に裁断機で裁断します。
それが6枚、8枚となると、ちょこっと伸ばしてすぐに裁断。薄いと裁断機が使えない場合もあるのでハサミで切ったり。
まとめて裁断した場合の、4~5倍かかります。
最近、旅館やホテルも宿泊客を少なくし、その分サービスに力を入れる傾向があります。
宿泊客が少ないと浴衣も少なくなり、高級路線で行く場合はサイズが細分化していく傾向があります。
300枚、500枚と作っているうちの、時々の40枚5サイズとかでしたら、文句もなく縫製工場もやってくれるのですが、その40枚5サイズみたいなのが続いていくと、縫製工場も音を上げるようになります。「仕事がぜんぜん進まない!」と。
現状では縫製工場もなんだかんだでやってくれていますが、今後縫製できる人の減少、生産数の減少が確実に来るわけですので、そうなったときに、少量多サイズはどうしようと考えています。
一番怖いのが、問答無用で縫製工場にそっぽを向かれること。
縫製工場不足になりつつある現在、縫製できる工場を確保しておかないと弊社も潰れてしまいますので。