根津美術館で開催中の「繍と織」展に行ってきました。
”繍”は刺繍の繍で、刺繍を意味します。
”織”はご存知の織りです。
刺繍と織りの逸品が展示されています。
根津美術館 https://www.nezu-muse.or.jp/
初めての根津美術館。というよりも初めて”南青山”に足を踏み入れました。
噂に聞いていた通りの高級な雰囲気の街。
ヴィトンやプラダの直営店が軒を連ね、ポルシェやベンツが道を走りまくる・・田舎者の自分はキョロキョロしっぱなし。
そんな南青山の一角にある根津美術館。
入り口には竹林があり、落ち着いた暗めの色合いの建物が、これから観る展示の期待を高めてくれます。
お目当ての展示「繍と織」は、上代綴れから始まりました。
上代綴れとは、飛鳥時代、奈良時代(6世紀~7世紀)に織られた布の切れ端です。
そんな昔の布が残っているのにまず驚き、未だその色を失っていないことにさらに驚きました。
刺繍で作られた柄もかなり残っており、今にも通じるデザインが見てとられます。
色や柄がしっかりと残っているのは、「絹」の切れだからでしょうか。
当時は当然化学染料はありませんので草木染めで色を付けているはずです。
上代綴れの次は、仏教染織、能衣裳。
安土桃山時代から江戸時代の仏教染織、能衣装が展示されています。
仏教染織というと、袈裟や敷物です。
能も仏教染め色も、格を意識させられる品のあるもの。
正直理解できていない部分も多いのですが、どのような文様やデザインが使われているのがが良くわかります。
最後に江戸時代の小袖です。
武家の正装だったり大商人の婚礼用だったり、一般庶民が着るようなものではありませんが、デザイン的にも少し身近になってきました。
これらすべてワンメイク。オーダーメイド品です。
染や刺繍だけでなく絞りなどあらゆる技術で作られており、いやはや、見ているだけでため息が出てきます。
いやいや、久々に良いものをお腹いっぱい見てきました。
弊社は浴衣をデザインし、作っているのですが、やはり浴衣に使うとおかしくなる伝統的文様もあります。
今回、能衣装や仏教染織から使っては駄目な文様を知ることができました。
また小袖からは、浴衣にも応用できそうなヒントをたくさんいただきました。
そして実際のモノを観るということは、書籍や図録からではわからない物がたくさんある事に気付かされました。
東京の南青山まで足を運んだかいがありました。
それとふと思ったこと。
今回の展示で、上代綴れなど昔の布がいまだ色褪せず残っているのは、やはり「絹」に「草木染」だからでしょうか。
今の化学染料よりも草木染めのほうが長持ちするのでは、と思いました。
弊社で良く扱う「注染」は色がすぐに褪せてしまいます。
旅館浴衣に使う断料も色褪せが避けられません。
草木染めと化学染料の違いだけでなく、絹と木綿の違いもきっとあるでしょう。
以前「草木染ワークショップ」に参加して、絹と木綿の発色の違いに驚いたことを思い出しました。
時々「浴衣は長く使えるものです。親子三代使うこともできます」みたいな事を言う人もいて、それは暴言にも程があると思うのですが、今の注染ゆかたは数年しか持ちません。親子三代とか持つのは正絹の着物の話です。
どうも浴衣と着物をごっちゃに考える人が身近にいたりするのですが、本当にやめてほしいなぁと思うのです。