新しい年が明け、段々と浴衣制作に関しての問い合わせが増えてきました。
「オリジナルの浴衣を作りたいんですが、仕立までしていくらなのか価格を教えてもらえますか?」
「生地は支給するので浴衣を仕立ててほしいんですが、いくらで縫製してもらえます?」
以前も何回かブログで取り上げたのですが、すぐに金額は出せません。
どんな浴衣かわからないのに、どんな仕様なのかわからないのに、とてもあやふやな情報だけで金額出せって無理な話です。
「え、金額出ないんですか!今他の会社にも聞いていて、価格を比べている最中なんですよ!」
いや、あんた、ソレ言っちゃあ駄目なやつでしょ。
うちの会社、舐めてるでしょ。
上記のやり取りは実話です。
しかも同じようなやり取りを、今年に入ってもう数回行っています。
で、こうゆう失礼な問い合わせの一番多いパターンが、自分の会社名を言わない。
どこの誰なのか、一切自分の事を話さない。
自分の情報は出さないけど、自分に必要なことは聞きたい、ちょっと失礼すぎる話です。
というか、そうゆう自分に都合の良いことだけ聞き出そうとしている会社と、まともに仕事ができると思いません。
さっさと電話を切ってさっぱり忘れる!とは言っても嫌な気持ちは残るのですが・・
今、和装業界は実際に手を動かしてモノを作る立場の人がどんどん少なくなっています。
浴衣を縫製できる人、生地を染める人だけじゃなく、晒工場、整理工場、織工場など、どんどん少なくなっています。
なので今有る工場に仕事が集中していて、非常に忙しい状態が続いています。
はっきり言って、「作り手主導」な状態です。
それが分からず今までと同じように、仕事をぶら下げるとどんどん食いついてくる、みたいな感覚で言われても仕事を受けません。
今は作り手が仕事を選んでいる状況です。
ただ勘違いして欲しくないのは、作り手が偉そうに仕事を選んでいるのではなく、作り手は職人気質の人が多いのでまっとうな仕事をしたいということです。
基本的に、自分が携わった仕事は変な仕事をしたくない、きちんとしたモノを作りたい、ということです。
昔のように「仕事を出す方が偉い」という仕事じゃなくて、注文を出す側も受ける側も対等である、という仕事になってきています。
モノ作りの場合、そんな簡単にできるものはありません。
最初に上げたように、失礼な質問をしてくる方々の多くは「自分は浴衣に詳しくないので色々と教えてほしい」と言ってきます。
でも気になるのは「1枚いくらでできるのか」なわけで、金額を出すに必要な情報は全然出してこない・・
浴衣でも作務衣でもタオルでもカバーetc、物を作るときには、どんな生地を使ってどんな仕立てにするのか、それによって価格が大きく変わってきます。
専門的な仕様がわからないと金額は出せませんが、その仕様を決める手伝いを弊社のような立場が手助けをして決めていきます。
とにかく金額を聞きたいのなら、必要な情報を出してもらえないと出せません。
もちろんその必要な情報の中には、会社名や住所なども含まれています。
新型コロナ禍が過ぎてインバウンドも盛んになりました。
改めて和装に注目が集まっています。
和装の中で気軽なイメージの有るものといえば「浴衣」。
気軽に着られる着物として「浴衣」に手を出す人、会社が多いように思われます。
が、浴衣と言ったって、そんなに簡単なものじゃあありません。
完成品に後から柄をのせるTシャツプリントのように作れるものではありません。
安価な◯オンさんとか、イトー◯カドーさんのセット浴衣のように、作れるものではありません。
安価なのは安価でできるように綿密に計画されて作られているからです。
もっとも◯オンさんとか、イトー◯カドーさんのように綿密に計画するのなら、同じような価格で作ることはできますが、それには年間通して計画し、それなりの枚数を作ることが必須です。
「今年はオリジナル浴衣を作って売り出すぞ!まずは100枚。仕立もしてすぐに着られるようにして売るぞ!」
仕立て上がりの浴衣は、◯オンさんとか、イトー◯カドーさんと同じ土俵で多々書くことになるのを忘れている方が多いようで、もちろん仕立あがりの浴衣でも周知されているブランドの商品でしたらそれなりに高くても売れるのですが、自社浴衣や着物が周知されていないブランドでしたら、正直作るのをオススメできません。
せっかく作ってもほとんどが在庫になりました、というのでしたら弊社としても心苦しいです。
できれば「たくさん売れたよ、また今年も頼むね」みたいに言ってくれる方がやってかいがあります。
もちろんやったかいがあるのは、弊社だけじゃなくって縫製工場、染工場など色々な職人さんたちもやりがいがあります。
年が明けて色々と計画されている方が多いと思いますが、真摯に問い合わせくださるようお願いしたいと思います。
他社の当て馬としてとか、どこの誰かは言いたくないけど情報だけほしい、といった問い合わせは困ってしまいます。