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工賃は上がっています

最近、本当に多いのが、「浴衣1着作るのにどのくらいでできますか?」という同業者からの問合せです。

要は「今まで頼んでいた工場が値上げをしてきたので、今までと同じ値段で浴衣を作るところを探しています。」、という意味の問合せです。

 

燃料費の値上げ、材料費の値上げ、最低賃金の値上げ・・・すべてが値上げの昨今です。

当然浴衣に関わる全てのトコロで値が上がっています。

だけど、それはそれこれはこれで、どこかに安くできるところはないのか、ということで弊社に問い合わせしてきています。

いや、同じ日本国内なんだから、ウチだって同じで値上げしてますよ。

 

実のところ、海外でも燃料費の値上げ、材料費の値上げ、最低賃金の値上げ・・・になっているわけで、それに円安も追い打ちをかけていて、例えば中国で浴衣を作った場合でも日本国内と変わらなかったりします。

 

 

先日も地元の和装関係の問屋さんに行ったとき、「浴衣を作るのに、生地が高くなり染も高い。おまけに縫製代も高くなって、このままじゃあ浴衣を着る人がいなくなっちゃう。」と嘆いていました。

 

いやいやいや、それは原価数千円で何十年も昔から浴衣を作らせてきて、その数千円の原価になれてしまっているからであって。

しかも新型コロナ禍の際には注文を全く出さなくって、加工場が困っていても特になにかするわけではなく、忙しくなったら昔と同じ値段で浴衣は作れないか、と言っているわけで。

 

昔は、染工場も織工場も縫製工場も、お年寄りが「仕事があるから続けよう。ウチらは年金があるから生活に困るわけじゃないし。いいよ、昔の値段でやるよ。」みたいなトコロが多くありました。

知り合いのお店の社長は、これを「年金機」と言って嫌がっていました。というのも年寄が採算度外視でモノを作るため、若い人が仕事を成り立たせられないから。

で、和装業界(和装業界だけじゃないと思いますが)は、作り手を叩いて叩いてとにかく安く仕事をさせ、そして他の同業者の下をくぐって販売するのが通例でした。

 

新型コロナ禍が過ぎてあたりを見渡してみると、今残っている工場はきちんと工賃をとり、利益をだして、仕事として成り立っていたところです。

 

 

浴衣の縫製 業務用

正直、弊社はそれほど安く浴衣を作っているわけではありません。

「高い」と言われたこともよくあります。

 

でも弊社は、生地、染め、縫製、と様々な工程に関わっている人がきちんと利益を取れるようにしています。

けっして暴利をとっているわけではなく、当たり前の工賃が取れるくらいの価格を出しています。

自分で言うのも何ですが、弊社に関わっている工場は、みんなニコニコと仕事を受けてくれています。

なので弊社で作る浴衣は、みんなが気持ちよく作っている浴衣です。

安い工賃で叩いて叩いて作らせた浴衣じゃありません。

 

買う方としては、それは安い方が嬉しいと思いますが、作り手が「コノヤロウ、コノヤロウ、俺を安く使いやがって」と思って作っている浴衣に袖を通すのはどうでしょうか?

そんな思いは関係ない、と割り切れるものでしょうか?

 

 

先日問い合わせがあった問屋さんですが、「浴衣の縫製、いくらですか?生地は用意しますので」

改めて聞いたら、浴衣1着2000円代で縫えるところは無いか、と探していました。

逆に聞きたいです、「あなた浴衣1着2000円で縫いたいですか?」と。

 

他の問屋さん、「絵羽浴衣300枚あるけど、オタクはいくらで縫ってくれる?3000円くらいでできない?」

絵羽浴衣って、パーツごとの柄のすり合わせが必要なので手縫いになります。

こちらも逆に聞きたい「3000円で、手縫いで絵羽浴衣縫いますか?1着縫うのにどのくらい時間かけます?」

 

結局、世間は色々と値上がりしているけど、それはそれ。

糸や生地が高くなった分、縫製を安くして、今まで通りの値段で売ろう、という事です。

 

 

実際に手を動かしている人々の工賃を叩いて安くして、ということはそれらの人を下に見ているということです。

今、生地を織る工場も、染工場も、縫製工場も少なくなっていて、どの工場も仕事が溢れています。

なので今まで、叩かれいじめられてきた分、「安い仕事を受けない」という状況が増えてきています。

となると、今まで叩いてきた問屋や会社が逆ギレしていると・・・「ウチの会社を潰す気か!」。

もうね、そういう会社は潰れてほしいですね、気持ちよくモノづくりができなくなってしまうから。

 

何十年も昔から値上げしてこなかった、いや値上げをさせてくれなかった工場が、ここに来てようやく反撃できるようになってきました。

きちんと工賃を払い、各工場と良好な関係を築いてきた弊社としては、とても良い状況だと思っています。