毎年11月の初めごろに、東京の染物工場が集まる新宿周辺で「紺屋めごり」というワークショップと工場見学を兼ねたイベントが行われます。
普段なかなか見ることのできない職人の仕事場に入り、その技を体験できるとても貴重な機会です。
今回体験したのは「引き染め」です。
「引き染め」とは刷毛を使って生地に色を付ける方法です。
無地のベタ染めも、模様を描いていったりもします。
今回体験したのは無地のベタ染めです。
受付を済ませて、そのあと工場内に入れていただきます。
普通だったら入れない場所。
ワクワク感が止まりません。
ここで通常でしたら1反分の生地を伸ばして、張り、そして色を乗せていきます。
体験では生地を張ることろからやらせてくれました。
体験分の生地は1.5M。
その生地を棒で挟み、工場内の両側に立っている柱にくくりつけられた縄で張っていきます。
縄で張るのはさすがにやってくれましたが、一つ一つの作業が初めての体験です。
生地を張った後に伸子を生地の耳に刺し、巾方向にもぴっしりと張っていきます。
ここまでが前準備。
楯も横もパンパンに張られた生地に、刷毛で色を付けていきます。
まずは手本をみせてもらい、そのあと一人一人やっていきます。
基本ムラができないようにしないといけないので、刷毛に含ませる量、刷毛のスピード、手の繰り返し方など、いや結構むつかしい。
手は動かしっぱなしですし、バケツも下げていて、思った以上に手が疲れます。
でも、実際に作業してみるのは、本当に面白くてよい体験です。
ところでよく勘違いされるのですが、無地のベタ染めというと生地をまとめて染料の中にドボンとする、という方法。
実は染料の中にドボンと漬けるのはムラができやすいのです。
黒とか濃紺とか濃い色だったら村もわかりにくいのですが、黄色とかピンクとかの薄い色だと本当にむつかしい。
業務用の大量生産の生地だと、糸を先に染めて織ったり、ローラー捺染にて生地に色を付けたりします。
少量の生地を希望の色に染めるとなると、やはりこうゆう風に1反ずつ刷毛で色を乗せていく方法がベストになります。
ちなみに通常弊社で無地に生地を染める場合は、最低ロット24反です。
今回染めた生地は”正絹”です。
正絹の方が木綿の生地より染まりやすいと聞きました。
動物性の繊維か、植物繊維かで使う染料から染め方から、いろいろと違ってきます。
以前試作として木綿生地を正絹専門の染工場で染めてもらったことがありますが、色のノリがとても悪く出来上がってきました
色を付け終わった生地は、乾くまで上の方に上げておきます。
そのあと蒸して色の定着を行い、整理をしてから出来上がり。
染めているときは黒に近い紺色だったけど、出来上がってきたら青でした。
染料は化学反応で発色、定着させるから、希望の色を出すのは本当に難しいのです。
今回ワークショップだったので、当然蒸し工程も量が少なく、また蒸しに入るまでの時間もあったと思いますので、イメージとちょっと違う色になっても仕方ありません。
多分、本来の仕事だったら最低1反(約13M)はあるし、そのあとの工程も含めて希望の色が出るような段取りをくんでいるでしょうからきれいに仕上がってくると思います。
でも本当に良い体験をしました。
知識で知っているのと、例えワークショップでも実際に手を動かしてやってみるのでは得られるものが雲泥の差があります。
ワークショップを開催してくださった染工場さんに感謝です。