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注染 浴衣と手ぬぐい

注染というそめ方は、大正時代にできた比較的新しい染め方です。

「日本古来からの~」とか「伝統的な~」みたいに言っている人もいますが、捺染や絞りに比べたらとても新しい染め方です。

 

注染が出来るまでは、多色染めをしたいときには手書きだったり、色ごとに型を作った捺染が一般的でした。

それが注染では、デザインの制約があるものの、一つの型で大量の多色染めが一度に出来るという画期的な方法でした。

 

今、機械捺染の大量生産が主流になっていますので、注染が席巻していたのは一昔前のこととなってしまいました。

今では注染というと「浴衣」と「手ぬぐい」が主流となっています。

 

 

注染ゆかた 反物 手ぬぐい

注染の浴衣と手ぬぐい、同じ注染なので同じように見ている人も多いのですが、技術的には浴衣を染めるのは高い技術が必要です。

 

簡単にいうと、注染は生地を蛇腹状に折りたたみ上から染料を注いで染めます。

染まってはいけないところに糊を置き、注ぐ染料の色を注ぐ場所ごとに変えることによって多色染めを行っています。

一度に大量に多色染めが出来ると言っても基本的には手作業です。

いくら専門の職人さんが染めると言っても100%ではありません。

どうしても染めムラなどの不良品が出てしまうことがあります。

 

手ぬぐいは約90cmの長さです。

ということは、90cmのなかできれいに染められればよいということです。

また染め不良が一番出やすいのが、蛇腹状に折りたたんだ折り目なのですが、手ぬぐいの場合は折り目でカットして切り離します。

ということから、手ぬぐいは染め不良品が出にくいと言えます。

 

 

じゃあ浴衣は、と言うと、1反まるっと不良なく染めなければいけません。

1反というと、約12~13M。

手ぬぐいに比べるととてつもなく長いのがわかります。

 

なので手ぬぐいを染められる染工場はけっこうありますが、浴衣を染められる工場は限られてきます。

ちなみに注染の産地といえば「大阪」「浜松」「東京」です。

またそれとは別に全国的にもいくつかの染工場があります。

産地の中でも浴衣を染められるのは「東京」「浜松」だけ。

それだけ浴衣を染めるのは難しいと言えます。

 

ただ”高い技術がある”=工賃が高い、ということも当然あります。

 

 

注染染め 工場

技術の高さ=不良品の少なさ、だけではありません。

発色の良さ、細かい部分の染まり具合、折り目部分の処理の仕方、など様々なところで高い技術が必要です。

 

 

 

 

個人的な感じですが、一番良いものが出来るのが「東京」。

東京は、歌舞伎や落語など日常的に手ぬぐいを使う文化があるので、高い技術が維持されていると思います。

なにしろデザイン力も高くて”粋”なものがたくさんあります。

 

次が「浜松」ではないでしょうか。

技術が高い割に工賃が安いのが特徴で、最近は徐々に工賃も上がってきましたが、ただ今まで低い工賃でやっていたので職人の定着率が悪くて徐々に技術も失われてきているように思います。

 

「大阪」は手ぬぐいしかできませんが、大量生産に向いていると思います。

発色も悪いのですが工賃の安さは魅力的です

 

 

 

そう、結局何が言いたかったかと言うと、

・注染が出来るからと言って、浴衣が出来るわけじゃない。

・高い技術があるところは、それなりに工賃も高い。